その次は、鍵盤の上にはない音。2011 / 03 / 17 ( Thu )
I WANT YOU BACK
/ Folder 君のことが大好きなおもちゃを見せてあげる ワクワクする楽曲にめぐり合うにたびに、何度もこのブログで無理やりにでも引き合いに出してきた、ジャクソン5の大好きな歌“帰ってほしいの”。いままで色んなアーティストの歌うこの歌を聴いてきた。しかし、こんなにも素晴らしいカバーは初めてだ。しかも若干十二歳(リリース当時)の男の子がメイン・ボーカルを務めるチャイルド・グループのカバーで。どんなに優れたアーティストでも、69年のオリジナルの“帰ってほしいの”、当時十一歳だったマイケル・ジャクソンのその奇跡的なボーカリゼイションをそのまま再現することは不可能だった。だからカバーする人はみんな、この歌にどこか自分なりの新しいエッセンスを吹き込むことで、不足したボーカルの迫力を何とか補おうと努めてきたような印象がある(いやしかし、それこそがカバーの妙、味わいというものかもしれない)。事実、マイケル本人でさえ、大きくなってからは、まったく別の歌にさえ聴こえかねないアレンジを施さなければこの歌は歌えなかった。しかし、沖縄アクターズスクール出身の男女混成七人組Folderによるこの99年のカバーでは、ヒップホップ的な要素が取り入れられてオリジナル版よりも少しモダンに仕上がっていることを除けば、ほとんどそのまんまである。要するに、ボーカルの実力だけですべてが決定する、ということだ。当時まだ小学六年生だったはずのメイン・ボーカリスト三浦大地は、この勝負に見事勝っている。これを聴けば、そう認めざるを得ない。誰が呼んだか知らないけれど、「和製マイケル・ジャクソン」の呼び名は伊達や酔狂ではない。この歌にいくつも仕込まれた絶頂部分のひとつ、サビの立ち上がりの「オー!」の叫び(カタカナで書いたら面白みもクソもないな)が、あの娘の掴み損ねた後ろ髪を呼び寄せる。ここにはまだ、こんなにも君のことが大好きなメロディがたくさんあるんだとばかりに、まるで面白いおもちゃを次々と取り出すみたいに、「ナッナッナッーナッ!」「ダッダラッダ!」(カタカナすごいな)と舌を遊ばせる三浦大地。気ままに走り去っていく女の子の自由と、その後姿を追いかけることしかできない男の子の不自由。何をやっても女の子には敵わないなと痛感させられる人生送っておりますが、この歌がある限りは、生まれ変わっても男の子になりたいと思う。この歌で見せる三浦大地のこのボーカルだけが、男の子が唯一使うことを許された魔法。ソロになってからの近年のライブでも歌うことがあるみたいだけど、YouTubeなんかで見た限りではどうやら彼自身もうこの歌声は出せないらしい。その隔たりを作るものが、単なる声変わりひとつとはとても思えないほどこのカバーは素晴らしい。大人よりも子どもの方がうまい。そう思うことは、結構あるものだ。人を好きになることも、時にはそうかもしれない。 スポンサーサイト
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