FC2ブログ

僕の魔法のポケット、叩いて出てきたものは全部君にあげるもの。そうしたら、君のポケットは全部僕のものでいっぱい。僕のポケットは全部君のものでいっぱい。

Whenever You Need Somebody
/ Rick Astley

rick astley-whenever you need somebody
80年代生まれを信じるな
 80年代初頭、MTVの放送開始をきっかけに、急速に新たなパフォーマンスのあり方を問われたポップ・ミュージック。当時のポップスを聴いてひたすら感じることといえばやはり、その強烈なニセモノ臭さ、イケナイ感じだ。装いの派手さ、といってもいいかもしれない。要するにお行儀が悪いのだ。そう、まだポップ・ミュージックにルールなどなかった素晴らしい時代である。そしてその浅ましいまでのお行儀の悪さは、常に商業的な策略の支配下にあった(いつだって何だってそうなんだけども)。ある意味で、ポップであることが、搾取すること、欺くこと、嘘をつくこと(しかも、公然に、である。ここが重要だ)と同義になった時代と呼んでみてもいいかもしれない。しかし、ひとつのメディアに人が集まると、そこには次第に秩序(単に「お行儀がいい」、という意味しか持たない、要するにほとんど意味などないに等しいものだ)を整えようとする流れが働き、その面白さはある一定の危険なラインを跨ぐ寸前で制御されるようになっていく(知性、人間らしさ、体裁、偽善、何と呼んでも結構だ)。そして、マナーと呼ばれるもののほとんどがそうであるように、手先の仕草みたいなそのシステムと手法だけが次の世代に継承され、本当の起源だけが忘れられていく(これが「ファッション」という言葉の意味だと覚えておくといい)。最近のポップスはカジュアルでクールだけど、なんだかあんまり面白くない(K-POPはすごくいいね! やっぱり発展途上の物ほど面白い)。デジタル・シンセサイザーが降臨した80年代はまさにポップスの革命期。その手法を思い出すのではなく、実際に80年代旅行に出かけたいくらい素晴らしい楽曲が目白押しである。
 そんな中から今日は、ルックスと歌声のバランスがどう考えてもおかしいリック・アストリーを紹介。本作は87年に発表された彼のデビュー・アルバムであり、同時に大出世作でもある。「絶対に君を放さない、絶対に君を落ち込ませない(“ネヴァー・ゴナ・ギヴ・ユー・アップ”)」、「君が誰を求めていようと、僕は君を愛し続ける(“ウェンエヴァー・ユー・ニード・サムバディ”)」などといった、いつかは溶けてしまうソフトクリームみたいな約束が、カラフルだけれど薄っぺらいビニールテープみたいなシンセの音に飾られる。そんなのばっかなのだが、極めつけは“トゥゲザー・フォーエヴァー”の存在。タイトルからして、これはもうちょっと躊躇してもらいたい禁断の約束。敗北を知らない80年代のポップスは平気でこれをやる。しかし、美人の言うことはすべて真実、というルールがあるように、素晴らしく見栄えするメロディが、裏切りとほとんど同義なこの約束を見事に許容している。これぞ正真正銘のポップ・マジック。80年代のポップスは真実など相手にしていない。魔法の存在を、疑うか、疑わないかの違いだろう。
スポンサーサイト



19:10 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
謎と矛盾の両翼 | top | うまく弾けないときにあんなにも悔しい思いをする楽器は恐らくピアノの他にはない

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/990-4df97039