FC2ブログ

時間的には「おはよう」

She's Gone
/ Tavares

Tavares-shes gone
おやすみ
 70年代のディスコ/ソウル・ミュージックを語る上で決して外すことのできないヴォーカル・グループであるタヴァレスの、74年に発表された四枚目のシングル。タヴァレス史上最大のヒットと言えばやはり名曲“イット・オンリー・テイクス・ア・ミニット(75年。邦題は“愛のディスコティック”。意味不明)”だが、一分あれば恋に落ちるには十分、と歌っていた彼らが、こんな歌を歌っていたとはつい最近まで知らなかった。去ってしまった彼女。誰もが慰めの言葉を口にし、終わってしまった愛をどう処理するかは自分次第、と分かっているにも関わらず、出てくる言葉は"Oh I, Oh I, Oh I"という決意と未練と戸惑いが混乱したままの叫びばかり。彼女を失った街を彷徨い歩きながら、すれ違うキュートな女性たちから雀の涙ほどの慰みを得るが、誰一人として彼女の代わりができる女性などいないことを、誰よりも主人公自身がむなしくも理解している。タヴァレスの強みのひとつでもある、五人のメンバー全員(実の五人兄弟である)がリード・ボーカルを担う実力を持っている、という個性も、この歌では特に効果的に発揮されている。すなわち、入れ替わり立ち代り歌われる、たくさんの男の"Oh I"の叫びを集めて大きくしても、それに応える「彼女」がどこにもいない、という強烈な演出だ(終盤にはいよいよ"I'm talking to myself"という半ばヤケクソ気味の合いの手まで入る)。そんな楽曲を、“イット・オンリー・テイクス・ア・ミニット”と同じタヴァレスが歌っている、という事実が、僕には何よりも大きな説得力を持っている。恋を始めるのに必要な時間は一瞬、その一方で、終わりは永遠に続いていく、というアンバランスな対比。この歌が静かな夜に流れ始めるたびに、彼女は去っていってしまうのだから。
 以前にジャクソン5の“帰ってほしいの”のレヴューでも書いたことだが、70年代の優れたポップ・ミュージックは、どれもことごとくフェードアウトで立ち去る構成になっている。“セプテンバー”も“キープ・オン・ジャンピング”も“ディスコ・インフェルノ”も“リライト・マイ・ファイアー”も、全部そうだ。タヴァレスの楽曲も、もちろんそういう風になっている。みんなディスコの歌である。きっと、誰もパーティーの終わらせ方なんて知らないからだろう。人間の脳に、忘れる、なんていう機能がついているのもきっとそのせいだ。毎晩のように誰もが、もう一度触れ合うことを願いながら、何かを失っている。
スポンサーサイト



06:18 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
Tiny Night Fever | top | 2010年ベスト・ソング⑩

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/983-88c1991e