FC2ブログ

2010年ベスト・ソング⑧

Honey
from the album "Nobody's Daughter"
/ Hole

hole-nobodys daughter
女の子は嘘しかつけない
 ホール名義としては実に十二年ぶりとなるオリジナル・アルバムを昨年発表したコートニー・ラヴ。コートニー以外にオリジナルのメンバーがひとりも残っていないことが、この作品がホール名義でなければならなかった必然性をいまいち感じさせなくもあり、それと同時に、ホールというバンドの背後にある彼女の個人的な物語、すなわち、あの94年、『リヴ・スルー・ディス』の物語を聴き手に激しく想起させる効果を上げている最も大きな要因でもある。コートニーという女性は、口先とおっぱい以外を母親のお腹に忘れて産まれてきたような人だと思われがちだけど(要するにビッチってことだけど)、彼女の音楽を実際に聴いてみたら、とてもそんな風には思えないはずだ。このアルバムにしても、ジャケットのマリー・アントワネットはそれがマリーであるという認証に必要不可欠な「顔」を失い、タイトルは「ノーバディ」というどこの誰でもない名称を必要としている。そうやって無我の仮面の裏側に隠れなければ、誰もがあの悲劇を連想してしまうホールというコスチュームの身では告白もできないほど、実は脆いのだ。だから、この“ハニー”という楽曲の中で歌われる「あなた」や「彼」が、いったい誰のことを指し示すのかは、僕には当然わからない。しかし、痛々しくも切ない歌である。ハニーというだらしないほどに甘い関係にあったはずの人が、すでにビター・エンドに沈んでしまっているという激しい対比。雨の降る中、恐らくは一生埋め隠すことのできない真っ暗な穴の奥底を掘り起こし、彼女は自分と同じく顔を失ったかつてのハニーの幻影を蘇らせる。その姿だけが、この作品がドラマに溺れたホール名義でなければならなかった唯一の必然性として成立している。“ハニー”の中で歌われる「リヴ・フォーエヴァー」の叫びは、やはりどこまでも『リヴ・スルー・ディス』と地続きなのだ。すっかり割れ果てて、皮膚にめり込んだ破片が足元を血まみれにしても、彼女はそれが自分のために用意されたガラスの靴だったと自分を騙して履き続けている。彼女がその嘘をつき続ける限り、僕は騙され続けよう。僕は言い訳しかできない男の子だから。
スポンサーサイト



12:57 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
2010年ベスト・ソング⑨ | top | 2010年ベスト・ソング⑦

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/980-7e73c8af