FC2ブログ

2010年ベスト・ソング⑦

Scribble
from the album "Barking"
/ Underworld

Underworld-Barking.jpg
心と身体の鳴き声
 アンダーワールド通算六作目となるオリジナル・アルバムから。楽曲タイトルは、「殴り書き」という意味。その言葉が示すとおり、数々の名詞が意味を失った記号のように放置され、音のひとつひとつが星屑のように散らばっている。色とりどりのネオンの輝きに溢れた夜の街を車で疾走するみたいで(できればポンコツ車がいい)、その描き出される乱れた景色がとても綺麗だ。「鳴き声」というアルバム・タイトルも、雑多なままのアートワークも、素敵だと思う。アンダーワールドの音楽にはこれまでどちらかと言うと、銀色のフレームのような硬質な印象を抱いていた(きっと車のCMに使われてたからだけど)。そしてだからこそその音楽はときに幾何学的で、思慮深く理知的で、そして、少し理屈っぽかった。抽象的なイメージを具体へと昇華させることが、耳に聞こえる実態を持った音楽の重要な目的のひとつであることは間違いない。しかし、初めて自分たちの持っているポップ性を認めることができたアルバム『バーキング』で、彼らはそんな具体さえも内包するもっと大きな抽象の宇宙へと華々しく解放されていったような気がする。人間とは違う言語で話す数々の音それ自身が、その宇宙が如何に自由であるかをすでに「わかっている」のだ。太古の人々が夜の空で星を結ぶ落書き遊びをしていたように、どこに配置されても自分たちがひとつに繋がれることを知っている。そうやって自由に跳ね回る粒子のような音が、部屋中の壁に光の流れを生み出すミラーボールみたいに、ひとつの巨大な河を作っていくのだ。そのまま壁紙にしたくなるような、めくるめく陶酔のダンス・ミュージック。人は、なぜ踊るのか――。それは、人の心と身体が、必ずしも一致した形をしていないからだろう。見ようとしても目に見えない心と、見たくなくても見せつけてくる身体。本当に優れたダンス・ミュージックだけが、そんな仲の悪い心と身体に、和解の場所があることを示してくれる。人が踊るとき、その素敵なダンスはきっとこんな風に鳴いている。
スポンサーサイト



14:29 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
2010年ベスト・ソング⑧ | top | 2010年ベスト・ソング⑥

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/979-ab8cba42