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2010年ベスト・ソング②

Heart Swells/100-1
from the album "Romance Is Boring"
/ Los Campesinos!

Los Campesinos-Romance Is Boring
ロマンスの隠れ場所
 結成時からのメンバーが一名脱退し、新たな編成では初のアルバムとなった、ロス・キャンペシーノス!のサード・アルバムから。シングル化された楽曲ではないし、アルバムの中で最もわかりやすいハイライト的な存在感の歌でも決してない。収録時間はたったの46秒。歌われる詞は、「今ここに残っているのは僕を含めた三人だけ。僕。君の影。君の残響。これほどの孤独を覚えたのは初めてだ」、これだけである。ロス・キャンペシーノス!というバンドは、そもそもが賑やかな口先と饒舌な手先だけで音楽を作ってきたような連中だ。しかしここでは、気まぐれに訪れた空虚な凪のように、すべての音がゆったりと譜面の上を彷徨っている。ユーモアとアイロニーに関してはとびきりセンスのいいバンドである。アルバム・タイトルにしても、恐らくは彼らなりのパラドックスなのだろうと僕は理解している。ロマンスに対するやかましい中傷を見せかけることで、その本質だけを守り抜こうとしたような印象だ。全編にわたってロマンスへの幻滅を語りながらも当事者はまったく落ち込んでおらず、異様にテンションが高い。実はちゃっかり楽しんでいる。そんな中で、この一曲だけが明らかに異質だ。本当に悲しいのだ。たった46秒の寡黙な音楽、たった五行しかない言葉が、ロマンスの果てに残された幻想と勘違いを暴く。聴く機会がもしあれば、ここで止まらずに次の“アイ・ジャスト・サインド。アイ・ジャスト・サインド、ジャスト・ソー・ユー・ノウ”まで続けて聴いて欲しい。この歌で不意に膨張した悲しみが逆流したかのように、彼らは突如として騒ぎ出す。極端から極端へひっくり返るようなこのふたつのトラックの切り替わる瞬間こそが、アルバムの本当のクライマックスだ。しかしこんな深い悲しみも結局のところ、ロマンスを美味しく食すことのできる人だけに用意された珍味のひとつ、と言うこともできる。ロマンスの本質のようなものが本当に理解できるとしたら、誤解が付き物のこんな遊びに誰も振り回されたりはしないだろう。それにしても、このアルバムのジャケットって本当に素敵だ。女の子の細く白い足に、赤い血が痛々しく流れている。たまらなくなって自分で掻き毟っちゃったみたい。もしかしたら彼女は、そこにある汚れなきものを知らないうちに隠そうとしたのかも、しれない。
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