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待ち遠しい80年代旅行

Come Around Sundown
/ Kings Of Leon

Kings Of Leon-Come Around Sundown
トラヴェル夢見心地
 何と言ってもジャケットの写真が素晴らしい。まるでイーグルスがかつて歌ったカリフォルニア・ホテルから眺めたような景色じゃないか。極東のちっぽけな島国の、更にちっぽけな町に住んでいる僕からしたら、本当にこの世にこんな景色が存在するんだろうかと疑いたくなるほど、このアートワークは幻想的に映える。しかし、こういう素晴らしい写真を見るにつけ、そもそも写真というものはそうあるべきではないかと改めて思い知らされる。写真が視覚的・物質的な意味においての真実を伝えるためのものだとは思わない。そこに実際に足を運ぶことで体感できる程度の感動なら、その写真にはいったいどれほどの意味があるだろう。このジャケットの写真が撮影された現地に赴いてみても、僕はきっとこれとまったく同じ景色を見ることはないだろう。写真は、それを撮った人物だけが見ることのできた幻想であって欲しいと思う。
 グラミーでも話題になり全世界で700万枚以上のセールスを記録した前作から約二年ぶりとなったキングス・オブ・レオンの新作であるこのアルバムは、しかしようやく手にすることのできた本国アメリカでの大成功に対する気負いをまったく感じさせない、これまでになくリラックスしたムードが一貫して漂う穏やかな作風に仕上がっている。純音楽的要素に限れば、以前と何も変わっていない、と評価できるかもしれない。ただ、前作の“セックス・オン・ファイア”などに代表されるパワフルな演奏とは明らかに違う、繊細なタッチで滑らかに描かれる景色は、その演奏の細やかさからは考えられないほどの全体像のダイナミックさに、バンドとしての歴史の重なり、地層の厚さを十分に感じさせるほど力強い。そう、それだけの時が流れたのだ、となぜか思わせる。不思議と懐かしいのだ。孤独以外の何かを求めるように高く伸びたこの二本のヤシの影を、僕は知らない。でもこれと似たような景色を過去に見たことがあるような気がする。誰もがこういう景色を胸に秘めて生きている、ということなのかもしれない。
 同じ季節、同じ天気、同じ時間帯、同じ場所に立ち尽くしても、写真家は二度と同じ写真を撮ることはできない。人は、何かの終わり、そしてそこを起点とした新しい始まりの風景に、しばしば太陽を沈ませる。もう二度と、まったく同じ太陽が昇らないことを知っているからだろうか。そしてだからこそ、時が経ち、すっかり幻想に変わってしまったその風景について、たまに、誰かに話してみたくなる。誰もその景色を目撃することができないとわかっていながら。まるで未来の思い出を語るように。
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