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You turned around, I disappeared.

Butterfly House
/ The Coral

The Coral-Butterfly House
極彩色のセピア
 風の正体をつかむことは難しい。それは何かが通り過ぎた直後の足跡に過ぎないからだ。立ち去っていく季節、それが冬である。風という何かが通過した冷たい形跡と落ち葉が立てるカサカサという足音を手がかりに、僕たちは冬を追いかけることしかできない。僕たちは冬の後姿しか知らない。いや、季節の後姿が冬なのかもしれない。後姿から語られる過去。冬にはどうもそんなイメージが付きまとう。個人的な話だが。
 僕たちは過去に対して何も持つことができない。それこそつかみどころのない風や足音程度の、思い出やノスタルジーといった幻想くらいしか。季節は巡るが、それはまるで螺旋階段のように、人を以前とまったく同じ座標に導くことはない。収録曲“ウォーキング・イン・ザ・ウィンター”の中で、ひどく印象的な風景が描かれていた。こちら側の岸に残された女性が、目を閉じて、恋人(恐らく)の乗った銀色に光輝く帆船が海を渡っていく姿を見つめ続ける――。何かの後姿を追い続けるということは、絶えず何かの過去に佇み続けるということと、少し似ているような気がする。そんな季節が、冬だ。しかし、その過去の再現は、決して完全ではない。以前と変わらない冬の景色なのに、でも確かに何かが違う。頭の中に思い描いていたとおりに画用紙に色彩を再現しようと試みるけれども、絵の具が一色だけ足りなかった。仕方なく近い色で代用したけれども、仕上がった一枚の絵を眺めてみると、そのたった一色のせいで、全体のイメージが当初とまったく食い違って見える。たった一色、その程度の違いかもしれない。でもだからこそ、そこだけが違うという悔しさともどかしさばかりが胸を苦しめる。そしてだからこそ、頭の中にあったかつての景色がどこまでも無垢で、美しく感じる。だって、本当にいま必要だったのは、そのたった一色だけだったのだ。思わず、振り返らずにはいられない。冬が人の時間を狂わせる。もちろん、出勤時間が迫っているのに寒さのせいで朝なかなか布団から出られない人の話ではない。
 何はともかく、冬になると、コーラルの音楽が似合うこの季節になると、僕は過去に向かって吹く風になる。白い息を吐いて、かじかむ両手をポケットの中で固く握り締める。いまでもまだ持っているふりをしながら。
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