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急発進 全速力 バックで前進 だだだだだ

I Want You Back
/ Jackson 5

Jackson5-I Want You Back
どこが、どうしてすきかなんて、訊くな
 大事な靴を脱ぎ落としていくあわてんぼうのように、高速で音階を駆け下りるピアノの音。足元をくすぐるような、ステップをふまずにはいられないベース・ライン。鮮やかな色合いを添えるストリングスの音色に導かれ、まだ幼ささえも知らないようなマイケルの歌声が、イントロで早くも絶頂を記録する。ジャクソン5の言わずと知れた名曲。邦題は「帰ってほしいの」。昨年、マイケル死去のニュースを知って、真っ先に思い浮かんだのがこの歌だった。大好きなこの歌を聴くことを、初めて怖いと感じた。ものすごく、哀しい歌に聴こえてしまうような気がして。でも実際に聴いてみたら、全然そんな心配は無用だった。不謹慎な言い方かも知れないけれど、またマイケルが世界を巻き込んだでっかいパーティーを始めてくれる――そんな予感さえ頭を過ぎった。そう、予感だ。この歌を聴くことを止められない理由。イントロが鳴り響いただけで、何か、とんでもないことが始まるような気がする。どこかへ行ってしまったあの娘でさえも、ひょっこりと顔を見せてくれるような、とっても楽しい何かが。素敵なメロディが鳴り始める直前の予感を、まさにメロディそのもので表現したような、そんな奇跡に限りなく近い時間。この次にはいったい何が始まるんだろう。フェードアウトで去っていく演出が、こんなにもニクイ歌はない。ゆっくりと遠ざかってしまう音の背中がひどく切なく、そして同時に、このフェードアウトの次に始まる何か、このフェードアウトの終わりを、止まらない胸の高鳴りを持て余しながらも待ち望んでしまう。優れたポップ・ミュージックほど、フェードアウトで立ち去っていくものだ。昨晩見た夢が、すぐに忘れられたがるのと似ているかもしれない。
 もしもこの歌がどこかから聴こえてきたら。もう知ってるはず。それは僕が仕組んだパーティーの幕開け。きっと、急発進で、全速力で、思い出す。気付く前から当たり前のように知っていたことを、思い出すはず。remenberよりもrealizeに近い、思い出す――それはまるで、バックで前進するような、奇跡のステップ。大丈夫、君のステップは完璧さ。僕はふと、自分がきちんと踊れているかを確かめたくなって、足元に視線を向ける。大丈夫、ちゃんと思い出せるよ。まるですっかり忘れたみたいに、まるでそれが初めてのことみたいに。でもたったひとつだけ、どうしても思い出せないことがあるんだ。いつの間にか、すきだった。

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