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Heart Rockerじゃないんですよ

The Hurt Locker
hurt locker
人と戦わない戦争
 戦いには高い塔が付き物だ、と考えていた頃があった。戦国時代の城だってその一種と言えるかもしれないし、アメリカの同時多発テロではワールドトレードセンターが、そして何より、天を目指した塔が崩壊したとき、人々は混乱の意味を知った。高い塔、それはすなわち、シンボルである。決まって高いところにあるものだ。他者に対する何らかの表明、ということだろうか。つまりは、思考と意識こそが、人々を目上げさせる。猿人が立ち上がったのだって、頭を使ったからだろう。精神と思想が人々の指向性を上に向かわせる。そしてだからこそ、戦いにおける倒壊した塔は、それがそのまま歴史的な墓標となる。だとしたら、その墓標にはいったいどんな文章が記されるのだろう。「こんな塔建てなきゃよかった」とでも書かれていたら面白いのに。
「彼らは、数えきれない命を救う。たった一つの命を懸けて――」というのがこの映画の日本でのキャッチ・コピーみたいなものらしいのだけど、実際に観たら『海猿』かなんかと勘違いしてるんじゃないかと思った。冒頭に記される戦争と中毒に関する引用からして、そういう美しい感動超大作とは方向性がまるで違う。緊迫の爆弾処理シーンでは物音よりも黙り込んだ戦場こそが多くを語り、周りの兵士が国に帰ることを願う中たったひとり戦いの場を求め続ける物語の中心人物は、決して勇敢には映らない。彼は任務終了後も戦場を思い、血の流れるそこに再び降り立つ決意を固める。その理由はたったひとつだ。爆弾処理こそが、彼の最も輝ける場所だからだ。そんな結構な幻想のためだけに彼は戦い続ける。精神と思想、その幻が誇らしげな見えない塔を築き上げ、戦いを呼ぶ。イラク戦争だって、結局核兵器はひとつも見つからなかった。全米イラク・アフガン帰還兵協会会長は「米軍に対する敬意が足りない」とこの映画を批判したらしいけど、兵士ってそんなに偉いのか? だとしたら、兵士はなぜ、いつまでたっても兵士のままでいるのか。

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