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支配されることは、支配すること

もうひとりの明日香
/ 福田明日香

もうひとりの明日香
つんくがただひとり掌握できなかった娘。
 メジャー三枚目のシングル“抱いてHOLD ON ME!”が初のオリコン一位に輝いたとき、他のメンバーが涙しながら喜びを表現する中、水を差すように「オリコン一位がすべてじゃない」と言い放った福田明日香。某番組の収録で、「芸能界に入るにあたって捨てたものは?」と訊かれ、ペットだとか甘いものだとかいう可愛らしい回答に紛れて、「本当の自分」なんていうちょっと無視できないことを言っていた福田明日香。そして、「モーニング娘。」という意味不明なグループ名が発表されたとき、冗談きついぜつんく、とでも言うような引き気味の苦笑で埋め尽くされたASAYANのスタジオで、たったひとり、「かっこいい」と心底嬉しそうにしていたのが、福田明日香だった。冷静で、淡白で、でも情熱的。福田明日香は、少なくとも僕の目には、そういう女の子に映った。モーニング娘。は成長の物語。最初は地味で自信なさげにしていた子も、つんくに指導され、芸能界の狂騒を経験し、ファンからの声援を浴びるにつれて、徐々に逞しい自信を手にし、輝いていき、そんな自分を「本当の自分」に置き換えていく。変わらなかったのは、福田明日香だけだったと思う。もちろん彼女は在籍期間も極端に短い。そのこともあるだろうが、言い換えるなら、彼女だけが、モーニング娘。に「本当の自分」を託さなかったのだ。だからといってふて腐れながらやっていたというわけじゃない。やれと言われたことは、何だってとことんやる。クールに振舞っているようで、ステージに立てば観客に笑顔を振りまいてみせる。眩しいスポットライトに照らされたそこに、「本当の自分」なんていなくたっていいことを、彼女だけが知っていたからだ。というか、彼女だけが、そのことに明確な意識を持っていたからだ。そこに福田明日香の強さがある。天才と凡人の差は能力の差じゃない。意識の立ち上がりの圧倒的な速度だ。モーニング娘。を辞めるという余りにも早すぎた決断にしたって、そうだろう。状況が変わるだけ。そんなことで自分は何も変わらないと彼女はわかっていた。この本を読めばそのことがよくわかる。つんくも、福田明日香に限っては、活動にあたっての口出しをすることはほとんどなかったという。そして、自分の手で卒業という決断を下した福田明日香に、つんくは“Never Forget”という名曲を送った。モーニング娘。結成のきっかけとなった「シャ乱Qロックボーカリストオーディション」で、若干十二歳にして最終候補まで残った福田明日香。オーディションの三次審査となったスタジオでの歌披露、そこで彼女が初めてスタジオに登場したときには、つんくはまだのん気にヘラヘラ笑っていた。それが、安室奈美恵の“Body Feels EXIT”の一行目を彼女が歌い上げた瞬間、「うわっ」と声を上げ身を乗り出し、つんくは目も口も大きく開いて完全に夢中になっていた。あのド迫力のパフォーマンスを、つんくはもう一度見てみたかっただろうなと思う。モーニング娘。としての活動を始めた彼女に、つんくは一度もそれを再現させることはできなかった。

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