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Forget Me Not

Crime Of Love
/ Comanechi

Comanechi-Crime Of Love
愛は、どうやら物忘れがひどいらしい
 それはかつて、「愛」と名付けられた真実だった。それは、あらゆる論理や定義を超越した方式であり、それは、地球をも救う絶対的救済であり、それは、歌うことのすべてだった。揺ぎ無いもの――疑い始めるには、それだけの要素で十分である。鉄壁の密室として区切られた空間を、自由自在に行き来してみせた誰かが必ず存在する。隙間なく地層を覆い隠したこの強固な大地でさえ、もしやそれそのものが運動・自転しているのではないかと疑いをかけられた経験を持つのだ。そして、そこから導かれる回答は、納得のいくものでさえあればいい。真実と呼ばれるものに、それ以上の価値はない。「愛」だけが例外であるわけがない。疑いをかけられ、錆びついた鎖に繋がれたそれは、身動きの取れないボルトのように、それ自身を錆びつかせていった。ザラザラに荒れ果てしまった表層。そこに、潤いを、生命を取り戻そうとするかのように、それは、真っ赤な鮮血を求め始める。それは本来、自身がピンクに近い赤色で表現されていたことを知っていたのか? その是非は、たいした問題ではない。真正面から全身に浴びた返り血が、初めて味わう愉悦であったとしても、実は何度目かの妥協や敗北であったとしても、「愛」がそれに納得できるのならば、それだけが真実なのである。
 序章と名付けられた、三十秒間の耳障りなノイズから始まる。丁寧なご挨拶のように添えられた、「12 Things Your Lover Can Leave You」という不愉快なメッセージ。紹介された十二のトラックで披露されるのは、誰かを傷つけようとして自傷しているような女性の金切り声と、早く何者かにならなければと追い立てるような爆音ギターの枯れた焦燥感。祈っても(“I Wish”)、すべてを脱ぎ捨てても(“Naked”)、千切れるように自問しても(“Why?”)、納得できない。それはどこか、死を渇望することと似ていて、確かに付き合いきれない。五十七に及ぶ長い長い沈黙ののち、自己と呼べるものと再会するためにそれは復讐を選択する(“R.O.M.P”)。ここに、「愛」の犯した最大の罪がある。つまりは、鎖に繋がれ錆びついたそれが、自身がかつて「愛」であったことを忘却した、という罪状。王子様のキスが目覚めさせるのは、もはや復讐にすら値しない幻想への認識。

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