FC2ブログ

ロマンチストは愛の語り方しか知らない

Life Is Sweet! Nice To Meet You
/ Lightspeed Champion

Lightspeed Champion-Life Is Sweet
セックスを通過した童貞
 ライトスピード・チャンピオンことデヴ・ハインズによるセカンド・アルバム。デヴ・ハインズといえばニュー・レイヴの以前史を作ったテスト・アイシクルズだが、あのバンドから前作となるソロ一作目へのサウンドの変遷には目を見張るものがあった。本作の製作期間はかなり短かったようなのだが、音楽性は前作以上に幅広く、聴き手にめくるめく音楽体験を約束してくれる。それを、おもちゃのピアノで遊ぶ子どものような軽やかさで展開する。素養があるというか、音楽をやるステージがそもそも広い人なのだ。タイトルがとてもチャーミングで個人的に大好きなのだが、もちろん額面どおりには受け取れない。“ミッドナイト・サプライズ”を歌った男なのだ、この人は。某誌のインタビューで歌詞を書くのはかなり早いと豪語していたらしく、確かに特別練り込まれた内容ではないと思うが、一貫して、前作と通じる卑屈な感性が横溢している。スウィートであるべき人生を送る資格が自分にだけはなく、人を好きになることがただそれだけで後ろめたい。だからこの人の歌う恋愛は、誰かとの出会いや別れといったコミュニケーションについてのあれこれではなく、想像でしかその誰かに触れられない世界、つまりは、致命的な不在から始まる。しかしそれは、いわゆる一般的な失恋話とは似ても似つかないものだ。もっと、もっと根深く屈折した喪失感なのだ。ここに人がいないという単純な孤独感ですらない、ただその一点の欠落故に、彼が少年期に創作した物語のヒーローだったというライトスピード・チャンピオンという人物は、人生をひどく過ごし損ねている。もしかしたら、前作から受けた個人的なイメージが強烈すぎたのかもしれない。本人はずっと肩の力を抜いて作っているのだと思う。でも“ミッドナイト・サプライズ”がこびり付いて耳から離れないよ。セックスをやり過ごしたはずなのに童貞。人を好きになったり、好きなのに繋がれなかったりすることに意味を求める必要なんてない。そんなことばかり考えている人間は、往々にして社会不適応な人間である。誰もが知っている。僕と君で、世界は回らないのだ。そしてだからこそ、ロマンチストは無知で貧相で、愚かだ。彼の両手はいつだって空っぽ。ロマンチストは戯言と紙一重のつまらない言葉しか持たない。そこから奏でられるメロディはでも、熟れすぎた果実みたいにだらしなく、甘い。

スポンサーサイト



03:06 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
もうLOVEマシーンはいらない | top | クレヨンしんちゃんの美学で聴こう

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/926-8202ec5c