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中澤裕子にちょっと似てる

Deadline
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正気と狂気の境目
 09年公開のアメリカ映画。『8マイル』『シン・シティ』のブリタニー・マーフィーが主演を務めたホラー映画。公開から半年近く経ったいまでも日本版のDVDが発売されていないところからして、今後も発売の予定はないのかもしれない。ブリタニー・マーフィーが演じる女性は作家。ストーカーのごとくしつこく言い寄っては暴力を振るう男から逃れ、執筆に専念することのできる静けさを求めて彼女は都会から隔絶された地方の館へと住まいを移す。古びた大きな館とは、その歴史そのものが「いわくつき」である。細々とした内容はホラー映画として非常に真っ当なものなので、ここでは触れない。幽霊以上に恐ろしい狂気は生きた人間の中にすでに宿っているというオチも(あ、言っちゃうんだ)、優れてはいるが決して真新しいものではない。この映画に突出して素晴らしい点があるとすればそれは、主人公が移り住む以前にその館で暮らしていた住人として、そして成仏できないまま館に居座り続けてしまった怨霊として、我が愛しのソーラ・バーチが出演しているというところだ。主人公が発見するビデオから明かされる館の秘められた過去。幸せだった夫婦生活、すれ違い始める関係、そして死後――を相変わらずの安定感で名演し、正気と狂気の境目(=Deadline)を明らかにしていく。本当かどうかは知らないけど、ユダヤ人ほど人種の違いについて敏感な人たちはいないという。どんな映画に出演していても、イヤでも孤立してしまう彼女の特別な存在感の根拠のいくつかは、その血によるものなのかもしれない。胸の大きい幼児体型みたいな、出来損ないのグラマラス・ボディみたいな、なんかちぐはぐな印象の体つきも、ある意味では、ソーラ・バーチがソーラ・バーチである「以前」に形付けが決定されていたものなのかもしれない。ただひとつ彼女が「以後」に手に入れたもの――どうしようもなく闇を湛えた瞳、どれだけ笑っていても満たされない、哀しみを帯びてしまうその表情は、確かにこういった緊張感を必要とした映画には、うってつけのアイテムのひとつと言える。実際、彼女の最近のフィルモグラフィを埋めるのはこういった残酷かつ陰湿な悪趣味映画ばかりだ。しかし例えば、本物の魅力としてのセックスアピールを持った人は、服を脱がずして裸になることができる。この人は、正気と狂気に境目などない、と言ってしまえる数少ない女優だ。ソーラ・バーチがあからさまな正気の世界と狂気の世界を行き来する『アナザー』なんていう映画もあったが、この人の演技しているときの顔は、そんな単純な二項対立では絶対に説明できない。外の景色を眺めているはずの瞳に内側へと広がっていく暗闇を湛えながらも、それと対面する他者にはその暗闇の深さを知ることさえできない。本当にゾクゾクする。こんなところで留まっていていい女優じゃない。

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