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2009年ベスト・ディスク1

年明けには、「○○年ベスト・ディスク50」つって、
前年を振り返って優れたアルバム50枚のレヴューを載せるってやってた。
09年版のそれをやろうと思って家にあるCDを眺めてたら、
僕がわざわざ振り返って聴かなきゃいけないくらい
熱心に耳を傾けたアルバムは、たったの四枚しかなかった。
不作だったってことじゃないよ。
聴き散らかすばっかで、この四枚くらいしか、僕がまじめに聴こうとしなかったんだ。

おーなんか新年早々雰囲気がおかしい。
言い換える。

09年、僕には四枚も熱心に聴いたアルバムがあった。
だからそれを一枚ずつ紹介する。
順番に紹介するけど、例年みたいにナンバリングはしない。
並列の四枚。すごい四枚なんだから。
僕の09年にぶっ刺さった最強の四枚。四天王。

今日は一枚目。

The E.N.D.
/ Black Eyed Peas

Black Eyed Peas-END
メロディは鳴る、必ず
 正直、先行シングルとしてすでに全米一位を獲得していた“ブン・ブン・パウ”を初めて聴いたときには、絶対に「ブラック・アイド・ピーズの新曲」っていう装飾がなかったら全米一位なんて獲れる曲じゃないと思った。超クールな曲だっていうのは認めるけどメロディとかほとんどないに等しいし、ノレるかノレないか、その判断をひどく聴き手に預けた曲だと思った。でも収録曲の中では人気曲みたいで、未だに「全米一位!」って聴いて“ベイビー・ワン・モア・タイム”が頭に流れる僕の感覚の方が古いものなんだと認めるしかない。でも、メロディとはいつだってそういうものだったはずだ。楽器を持たずとも誰もが口ずさむことのできる、公然と共有されるべきもの。“ブン・ブン・パウ”は、そのリズム感においては極めて優れた一曲だと思う。でも、「懐メロ」に親しみは感じても、「懐リズ」なんて聞いたこともないだろう? そういうことなのだ。
 疑いようのないワールドワイド・サクセスをもたらした前作『モンキー・ビジネス』。あれで、ブラック・アイド・ピーズは正真正銘の公然のものとなった。あらゆるジャンルの垣根を飛び越え、数え切れないゲストを招集し、ボーダレスを体現する。そういう意味において、あのアルバムはブラック・アイド・ピーズのひとつの完成型だった。メロディとは、人が音楽を口ずさむときの、温度と湿度を伴った生身の息遣いである。『モンキー・ビジネス』という来る者をまったく拒まないコミュニティは、それゆえに、とても温かい場所だった。僕たちは、『モンキー・ビジネス』の持つ途方もない豊かなメロディを前にして、立ち尽くすことなど微塵も求められなかったのだ。
 本作における基本構造はそこから驚くべき変化を見せた。外部の人間などいない。音楽性は、エレクトロ一本に固く貫かれている。デジタル・エフェクトを多用し、メンバー全員がまるでサイボーグのように振舞う。人間の息遣いを排除した、無風地帯。本作がまとうある種の冷たさは果たして、『モンキー・ビジネス』という、ブラック・アイド・ピーズそのものが公然の「メロディ」として完結した後の、アウトロに過ぎないのか? 違うのだ、と彼らは本作の幕開けから早くもそう宣言する。
 本作には少なくとも、『エレファンク』以降のブラック・アイド・ピーズが徹してきた、「何でもあり」の精神は希薄である。でもそれは絶対に彼らの表現の陳腐な矮小化を意味しない。でなきゃ最初の、「これはエンドでありビギニングである」、だなんていう思わず作り手の美意識を疑ってしまうようなダサすぎるアナウンス、彼らは必要としなかったはずだ。絶対に、誤解されるわけにはいかなかったのだ。これはメロディが鳴り止んだその後の物語ではない。彼らがここで言う、「エンドがビギニングにすらなり得る」、というパラドックス。そのことが意味するのは、「メロディがまだ鳴っていない場所は確かにある」、ということ。これに他ならない。
 収録曲の、“アイ・ガッタ・フィーリング”が好きだ。この曲のイントロが流れ始めると、僕はいつもジャクソン5の“アイ・ウォント・ユー・バック”の奇跡を連想する。なんでもできそうな気がするんだよな、ジャクソン5のイントロも本当に。そして、音楽が本当に果たすべきものとは、そういうものではなかったのかとブラック・アイド・ピーズは問うているのだ。マンデーもチューズデーもウェンズデーもサーズデーもフライデーもサタデーもサンデーも全部ここから始まる。ここからは何だって始まる。実際にどうかなんてわからないけど、でも無性にそう思わせる。ここには彼らが『モンキー・ビジネス』でやってみせた、何もかもが許されるパーティー感は存在しない。でもこれは行き止まりの「ジ・エンド」なんかじゃないんだぜ。まだ始まってないんだ。思い出してみろよ、メロディが鳴り始める前、その一瞬の余白のような時間には、いつだって未来が約束されてたじゃないか。彼らはそう言っているのだ。そして、メロディが鳴らない場所なんて、あるはずがないだろう、と。
 本作に対する評価は、ファンの間でも、メディアの間でも、賛否の分かれるものになっている。まったく、これは真新しいパーティーへの招待状だぜ? 始まる前からケチつけてどうすんだ。せいぜい開始時間には遅れないように、早めに家を出ろよ。

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