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自意識は嘘しかつけない

Rated R
/ Rihanna

Rihanna-Rated R
この人はブリトニーにはならない
 この最新作を聴くにあたって過去作をザックリ振り返ってみたのだけど、この人は多分、自分っていう漠然とした手応えにもっと確実なものを見たくて歌を歌っているんだろうなって思った。R・ケリーに才能を見込まれて鳴り物入りでデビューを果たしたリアーナも、多くのアメリカン・アイドルがそうであるように、当初は各方面のプロたちにうまい具合にとりあえずの「リアーナ」っていうキャラクターをプロデュースされていたんだろう。作品に対して彼女自身がどこまでの裁量権を持っているのかはよくわからないけど、それでもブレイクのきっかけとなったセカンド・アルバムでは“アンフェイスフル”なんていう裏切り者としての自分を歌っていたりなんかして、その次の傑作アルバムのタイトルは『グッド・ガール・ゴーン・バッド』、そして彼女のヴィジュアル・イメージは栗色つややかヘアーの美少女からシック&ダークな深みへと驚くべき変遷を遂げた。人が見る自分、と、本来の自分、と思いたい自分。そのふたつの虚像の狭間で自己嫌悪に陥って、わたしはこんなんじゃないって精一杯自己表現しても結局どこにも辿り着けない。何者にもなり損ねてる。レコード・セールスは最高の右肩上がりで華々しいキャリアを歩んできた彼女だけど、作品毎に無理やりでも自分を上書きしようとする彼女の歌を聴いていたら、その根底にはそういう煩悶が見て取れるような気がした。で、当然のようにそこにやっかいな恋人クリスの存在が絡んでくる。DVとか言われたりする、暴力を間に挟んだ恋人同士のコミュニケーションって僕にはよくわからなくて、失礼な言い方になってしまったら申し訳ないけど、要はお互いがそういう性癖だったりするんじゃないかって思わないでもない。でもとりあえずリアーナ本人がクリスの暴行についてどう感じているかは細かいところまではわからないし、僕にとって案外そこはどうでもよくて、ただ、本作におけるリアーナはただもう自分を傷つけることでしか、その傷口に触れることでしか、自分に対して確かなものを感じられないんだろうなと思う。有刺鉄線で身体ぐるぐる巻きにしてるブックレットなんか見たら「とうとうおかしくなっちゃったか」とか思う人もたくさん出てくるんだろうけど、でもやっぱりリアーナが賢いと思うのは、例えば「真実」というものがいつだって「暴かれる」対象でしかないのと同じように、必ずしもネガティヴこそが本音を語り出すわけではないということに、彼女自身が自覚的だからだ。ちゃんと傷ついている自分でさえ、本来の自分じゃないかもしれない可能性を、彼女は知っている。ただその一点のみにおいて、本作における狂気的な「リアーナ」を、彼女はきちんとコントロールできていると思う。ステージの上で彼女が裏切り続けてきたのは、手を振る観客ではなく、いつだって他ならない自分自身だった。だから彼女は傷だらけになって歌う。自分を疑い続けるこの呪縛から、解き放たれたい。完璧に狂い切れない愛と葛藤と彼女の強さと弱さが入り乱れる名曲“ロシアン・ルーレット”には本当に心を打たれた。痛々しいけど、幸せになりたいって叫んでる本作の彼女は、とても綺麗だと思った。

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