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開け放たれた扉の前で立ち尽くす

The Boy Who Knew Too Much
/ MIKA

MIKA-Boy Who Knew Too Much
世界の外側に閉じこもる
 前作『ライフ・イン・カートゥーン・モーション』にしてもそうだけど、なんでこんなにもカラフルでギャラクシーなアートワークなのに、ミーカその人だけが完全に色を失っているんだろう。そこに何か意図が働いているとは思えないけど、ミーカというシンガーの特異さを語るには十分に示唆的なファクターだと思う。内戦中のレバノンに生まれ、いじめにも遭いながら抑圧的な少年期を過ごした彼は、当然の帰結のようにファンタジーの世界にのめり込むことになる。彼のポップ・ソングが凡百の愉快犯たちと違って、例えば本作においても“ウィー・アー・ゴールデン”のような高い瞬発力を誇る楽曲のみならず、“アイ・シー・ユー”や“ピック・アップ・オフ・ザ・フロア”のような芳醇な魅力さえも発揮してしまっているのは、より過剰になったアートワークが映し出すような露骨なフィクションの世界の主人公が、ノンフィクションの世界に住むはずの彼自身に他ならないからだ。そこに歪みが生じている。だから、実際には目も鼻も耳も口も手も足もある、あからさまな「本物」でしかない彼がここで色を失っているのは、その暴力的なまでのポップ性の裏側に隠された悲しみとか、失われた未来とか、そういう複雑なものですらないんじゃないかと思う。ただ「本物」の自分との間に何か明確な違いを作りたかっただけなのかもしれない。だってこの人は、めちゃくちゃ前向きなんだ。なんというか、うまく言えなくてホント歯がゆいんだけど、誰もが何が何でもしがみついていようと必死こいているはずの、現実世界のわずかな後ろ髪を手放しちゃったことへの、後ろめたさが微塵もないんだ。引きこもりのくせに、ヲタクのくせに、根暗のくせに、めっちゃポジティヴなんだ。それがこの人の仮想世界に現実世界と対等の強靭さを与えている。ミーカの部屋はこの世で唯一狂いの生じている場所。世界の外側であるその部屋の内側に、世界は当然のように干渉できない。

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