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ひとりの人間が生きてる世界は、地球ひとつ分よりデカイ

要するに、
密室っていう閉じられた部屋の中にあるのは
もちろん謎とか死体とかっていう非・日常なわけで、
その部屋の外側では日常的な世界が回転していないといけないわけで。
でも密室を作るっていう心理としては、ものすごく観念的な意味で、
閉じ込めたいのはむしろその外側で回転している日常的な世界なんじゃないかって話。

ひとつの閉じられた部屋が、その外側の世界を閉じ込めているっていうパラドックス。
部屋の内側に外側があって、部屋の外側に内面的な世界があるっていう。

物理的な広さが物事を分かりにくくしてる。
「広い方=外側、狭い方=内側」。
そうじゃない場合だってあり得るって言ってる。
外側だと思っていたものが実は内側で、
内側だと思っていたものが実は外側。
そういうことだってあり得るんじゃないかって、
ミステリーはたまにそういう変なこと言う。


江戸川乱歩傑作選
/ 江戸川乱歩

江戸川乱歩傑作選
密室が真に閉じ込めるものとは
 知り合いからの薦めもあって初めて手に取った乱歩作品。推理小説を好んで読むことは少ないけど、とても楽しんで読めた。何が良いって、登場人物が決まって世の中に対して何らかの諦観や沈鬱を抱えていて、自分でもよく分からない漠然とした倦怠感をそれぞれに持て余しているところが良い。退屈な日常に飽き飽きしている彼らは、自分にとってのより良い居場所を追い求めるかのように、非・日常という妖しくも魅力的な香りにことごとく誘われていく。ある者は殺人という行為に未知の快感を求め、ある者は屋根裏からの傍見にそそり立つ思いを覚え、またある者は一脚の肘掛け椅子の内側に新たなる体験を見出していく。そんな彼らの狂気はいずれも、行き詰って膠着した日常生活に端を発する、抑え難い欲望の足掻きに他ならない。彼らは日常という余りにも強固な世界を、歪んだ価値観によってなんとか突破しようと試みているのだ。それは、鍵の掛かった部屋から魔法のように脱出すべく突飛なトリックを頭の中で転がす行為と、どこか重なるものがあるのではないかと思う。
 本作に収められた九作の短編の中に、密室モノの話はほとんど登場しない。しかし、読み手を「謎」という解き明かすべき不可解さの中に閉じ込める推理小説というものは、それがたとえどんなトリックを用いたものであったとしても根本的な話、密室的な要素を含まずにはいられないものだと言うことができるかもしれない。乱歩は、そんな密室という狭い箱の中に巨大な日常の死骸を片っ端から閉じ込めては、鮮やかな脱出劇を繰り広げる。そういう意味では作者は間違いなく物語の当事者だ。だって、密室とか謎とかトリックとかミステリーとか考えながら生きるなんて、世界のルールと照らし合わせてみたら明らかに世捨て人だろ。

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