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愛の人

楳図漫画に出てくる女の人って、
異様に可愛かったりきれいだったりするんだ。

最後に『闇を背負った漫画』って解説が寄せられていたけど、
楳図漫画のいったいどこに闇がある?
愛だ、って思うよ。

蟲たちの家
/ 楳図かずお

蟲たちの家
君だけに届かない
 一般的にはホラー漫画界の巨匠として知られている楳図かずおだが、彼の作品には、実は幽霊やおばけといった霊的なキャラクターはほとんどの場合登場しない。本短編集の表題作に登場する蜘蛛に変化してしまった女性も、「自分で、そう思い込んでいるだけだ」、なのである。本作に収められている別の話には、思い込みだけでたったの三時間のうちに老け込んでしまった男も登場する。昏睡した意識の中で愛する妻を看病した男も、要するにそう思い込んでいるだけだ。彼らはなぜこうも強烈に何かを思い込まなければいけないのか。自らの姿かたちを変化させてまで、自分を取り巻く世界のリアリティを歪めてまで、彼らはいったい何を思い込むのか。
 三十歳を過ぎた童貞男は魔法が使えるという。二十五歳という人もいるし、早ければどうやら二十歳でも使えるらしい。彼らが使う魔法とはいったいどのようなものなのか。それは、その言葉の響きが感じさせるようなファンタジー的な何か、などという魅力的なものでは決してない。童貞男が使う魔法とは、自分が童貞のままでも生きていける世界を捏造する力である。叶わなかった恋を、叶わないままどこかに封じ込めてしまう情けなさである。大好きだった女の子を、もしくは自分自身のどちらかを、無理やりフィクションの世界に落とし込めて、そもそもそれは叶うはずのものではなかったと自らに思い込ませる力ずくの想像である。楳図漫画の登場人物たちはだからこそ頑固なまでに思い込む。失われた愛に直面する勇気なんてどこにもないから。でも、そんな現実逃避は、本当に稀に、奇跡みたいな確率で、人々の心に深々と矢を突き刺してしまうことがあるんだ。届けられなかった思いが、不意に感動的な何かを生み出すことがある。彼らにとっての最高の幸福とは、もちろん大好きだった女の子を抱き締めることだろう。それはもう絶対に叶わない。でも思い込むんだ。それでも自分は生きられるって。そしたらきっとどっかに傷がついて、世界なんて楽勝で変わる。

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