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人は簡単に消えられる

Phone Booth
フォーンブース
公然と、密室
 公衆電話は不思議だ。ミステリーに出てくる郵便配達員みたいだ。すなわち、数えられない容疑者。見えない登場人物。堂々と設置された、透明な窓に仕切られたたった1メートル四方の空間で行われる会話を、道を行き交う人々は知る術もない。というか、知ろうとすらしないし、そこに人がいること自体に大抵の場合気付かないし、意識さえしない。その会話が例えば、誘拐犯との重大な交渉であったり、一世一代のプロポーズであったとしても。公衆電話は間違いなく屋外にあるにあるにも関わらず、その内側の空間はまるで、世界から隔絶された密室のようだ。内側なのに世界の外側。公衆電話はそんな密かな魔性を秘めている。
 世界は、大きさとか、重さとか、広さとか、そういった単純なはずの比較対象が、ものすごくわかりにくい場所だと思う。内側なのに世界の外側。とてもおかしなことを言っているような気がしてくるが、もしあなたもそう思うなら、あなたはまだ本当にやっかいな密室の存在に気付けていないのかもしれない。まるでファッション・コーディネートでもするかのように、会う相手によって対処する「自分」というキャラクターを使い分け、服を着るように数々の嘘をまとい、当然のように町を出歩くあなた。あなたは、口を開くたびに、自分さえも気付けないほど恐ろしくナチュラルに、密室を作り出している。あなたはただ自分の犯した密室殺人を数えられていないだけだ。その嘘が暴かれる危機に直面した時、あなたはどこまで自分の弱さを公衆に晒すことができる? それまで自分自身さえも完璧に騙し続けたその嘘と対面する恐怖はもしかしたらニューヨークのストリートをパニックに陥れる悲劇と対等かもしれない。

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