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世界と対等なんて幸福じゃない

Holly Wood
/ Marilyn Manson

Marilyn Manson-Holly Wood
死ななければ生きられない
 前作で遂げた音楽的な変容と四部構成に及ぶ長大な作品に仕上がった影響からか、ビルボード13位と商業的にはいまいち振るわなかった本作だが、それは数字の話でしかない。これは疑う余地のない大傑作である。『アンチクライスト・スーパースター』『メカニカル・アニマルズ』と共に壮大なトリロジーを織り成すその序章にして最終作という非常に重い意味を持ったアルバムである。時系列を遡る形で構成されたその物語は、ここから始まり、そしてこの始まりが明かされることで終焉を迎えるのである。だから本作は当然のように、詞的にも音楽的にも視覚的にも、キャリアにひとつの楔を打ち込むような集大成的要素を色濃く含んでいるし、マリリン・マンソンという狂気の人格の誕生の秘密さえも明かしてしまうような、彼の表現の核心部分を抉りまくる言葉が並べられている。更に、コロンバイン高校の一件で政府や親といった強権的な存在から一方的にスケープゴートに仕立て上げられたこともあって、拳銃や政府やキリスト教原理主義をテーマに取り上げるなど、世界観はここで確実な広がりを見せている。ここまでの作品に常に共通してきた何者かになりたいと祈るその欲望は、もはや地層の奥深くでとぐろを巻くに留まらず、表面部分にまで沸々と浮かび上がってきている。世界はなぜこんなにも理不尽なのか。自分が求めているものと、自分が対峙すべきものとは、なぜこうも絶望的に食い違っているのか。この地獄は、なぜ自分を何者にもならせてはくれないのか。マリリン・マンソンは、そんな抗い難い矛盾のど真ん中で自らを磔刑に処し、腐り果てることによってこそ、世界が恐怖する何者かになり得たのだ。しかし、彼が本当になりたかった「何者か」とは、こんな姿ではなかったはずだ。彼が自らのことを「生贄」と呼ぶのは、社会から敵視されることを意味するのではなく、そういうことなのだ。本作のグロテスクなアートワークは、だからこそ背筋が凍るほどに迫真的なのである。

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