FC2ブログ

No.40~No.31

No.40
Only By The Night / Kings Of Leon

Kings Of Leon-Only By The Night
ロックンロールの正しさを伝えるために
 07年の前作『ビコーズ・オブ・ザ・タイムズ』とまったく同じ制作陣・方法論で作られた通算四作目。自分たちの成功と成長を自覚したバンドがそこから更なる深化を目指したアルバムだ。本作もこれまで通り本国アメリカよりもイギリスの方でバカ売れした。前作よりもアレンジの幅を利かせ、シンプルでオーソドックスなロックンロールを守りながらも圧倒的な広がりを持ったキングス・オブ・レオン節満載の楽曲が出揃っている。ここには、スタジアム・バンドとしての輝かしい未来しかない。多くの観客を一度に引き付ける力を持った彼らの音楽のダイナミズム、それはいったいどこから溢れてくるものなのだろうか。U2やパール・ジャムなどのワールドワイドに活躍するスタジアム・バンドと共にツアーを回った経験が彼らの音楽に大きく作用していることはひとつ間違いない。キリスト教プロテスタント教会の一派であるペンテコステ派の伝道師を父に持つ彼らの幼少期は移住を繰り返す旅のようなものだったという。キングス・オブ・レオンはそんな特異な環境で育った三兄弟と従兄弟で構成された、ある意味でものすごく閉じられたバンドだ。ロックンロールこそが学校だったという彼らにとって、これはそんな閉じられた生活のたったひとつの「正さ」だったのだろう。そして、それはついに「みんなの」共有物になろうとしているのだ。


No.39
Off With Their Heads / Kaiser Chiefs

Kaiser Chiefs-Off With THeir Heads
カイザー・チーフスがカイザー・チーフスたる所以
 元々独特のリズム感を持っているバンドだとは思っていたけど、ここまで「踊る」ことに照準を絞ってくるとは思いもよらなかった。カイザー・チーフスのサード・アルバムはほとんどの楽曲がダンス・ミュージックとしての強烈な躍動感を誇示するアグレッシヴな作品となった。ファースト、セカンドを共に作り上げた大御所スティーヴン・ストリートと袂を分かち、新たにマーク・ロンソン&エリオット・ジェームスをプロデューサーとして人選したことも大きいのだろう。セカンドで楽曲のレベルでは確かな飛躍があったが根本的な変化が何もなかったぶん、本作の意欲的な姿勢には驚きつつも喜ばずにはいられなかった。シンプルながらも大きな広がりを持ったシンガロング必至のメロディはそのままに、ダンス・ミュージックの一体感とグルーヴを手に入れた本作からの楽曲はスタジアムでも強力な武器になるだろう。そもそもがとあるクラブで友情を深め合った仲間が集まってバンドを結成し、長い下積み期間を経て念願のブレイクを果たしたカイザー・チーフス。これまで「第二のブラー」とか「ブリット・ポップの再来」とかなにかとリバイバルの文脈で語られることの多かった彼らだが、このバンドのユニティはやはりこれだったのである。原点回帰が切り開く未来。それは、これがリバイバルではなく、カイザー・チーフスの本当のオリジナリティである証拠だ。


No.38
The Age Of The Understatement / The Last Shadow Puppets

The Last Shadow Puppets-The Age Of The
計算すらされていないパーフェクション
 別に過小評価しているわけではないしアレックス・ターナーの才能にはいつもグウの音も出ないほど圧倒させられてしまうけど、それでもアークティック・モンキーズは僕にとっての特別なバンドではないし、まあ好き勝手やっちゃってよ、ぐらいの遠い立ち位置から無責任に見守っているのが本当のところだ。完璧に構築された破綻のない音楽なんて、正直言って僕にはどうでも良いものなのだ。だからと言って簡単に無視できる才能では絶対にないのでこんなところに入れてしまった。僕のこの煮え切らない中途半端な評価がそのままアレックス・ターナーという破格の才能の手のつけられなさを物語っているとも言える。ちなみに07年のベスト・アルバムではアクモンのセカンドはNo.22に入れました。まあ、そういうことなのです。本作は、アレックスがすでに絶対的な評価を獲得し作品を発表すれば即座に多方面からメスが入れられてしまうある意味で自由を失ったアクモンを離れ、気心の知れた親友マイルズ・ケインと共に再び野放図な自由を手に入れてしまったら、天才の才能はやはり爆発してしまった、というものだ。若干21歳の青年が作った、完璧に構築された、破綻のない、完全な60年代音楽のポップ・スタンダード。それもモノマネに喰われたりはしない、むしろ喰ってやったような、趣味なのにそれを遥かに超越した奇盤。


No.37
Moon Rock / Paul Steel

Paul Steel-Moon Rock
世界にただひとつの魔法
 年間ベストでこのアルバムをこんな上位に入れてるメディアはどこにもないだろうな……なんて思ったりするけれど、僕はUK・ブライトンから現れたこの若干22歳の新星ポール・スティールを全力で支持するつもりだ。何か文句あるか。自分は、劣等感の強い子どもだった。学校の成績は特に良くもない、真面目で大人しいけど面白味のない子どもだった。おまけに何で自分はこんなに変な顔なんだろう、もっとかっこよく生まれれば良かったのに、と毎朝鏡の前で絶望しているような子どもだった。今でも状況は何ひとつ変わっていないけど、考え方だけは変わったと思う。頭が良いとか、イケメンだとか、そんなもんはくだらない魔法だ。金と時間を掛ければ、誰だってそれなりに頭も顔も良くなるさ。そう、本気で使おうと思えば誰にだって使える魔法なんだ。ひとりのちっぽけな男が『ムーン・ロック』だなんて妄想を逞しくしたところで、世界には何も関係のないことだろう。その妄想が生きる上での本質的な行いでないことはわかっている。けれど、『ムーン・ロック』、これは、世界でたったひとりのポール・スティールという男にしか使えない、オリジナルな魔法だ。僕にだってきっと僕だけを救う僕だけのオリジナルな魔法がある。何よりも大事なのはそんな自分を信じる勇気なんだと歌ってくれるこのアルバムが、僕は大好きです。


No.36
Friendly Fires / Friendly Fires

Friendly Fires-Friendly Fires
無限のポップ・ミュージック
 ストロボの閃光が映し出す、万華鏡のような目眩く音世界――。ニュー・レイヴ以降のそんな楽観的なフューチャリズムを鳴らすバンドとしては異例の音楽遍歴を持つ三人組、それがフレンドリー・ファイアーズだ。バンド結成当初はアンチ・ポップの代表格ともいえるポスト・ハードコアから発展し、ポスト・ロックやシューゲイザーやエレクトロニカなどの過剰な変遷を繰り返しながらも彼らが行き着いた場所はここだったのである。どうやら非常にストイックな音楽ばかり聴いていた時期もあったようだが、その経験が彼らをポップに対して厳しく批判的な人間にすることはなく、本人たちはむしろ新たな才能としてポップ・ソングを書くということをポジティヴに受け止めている。そのあっけなさというか臆面のなさが“パリス”などのポップで抜けの良いダンサブルな楽曲を自然に書けてしまう所以か。ポップ・ミュージックを「現実逃避」とスパッと言い切ってしまう彼ら。ポスト・ロックとかシューゲイザーにもそんな一面はあったな、と思う。というか、決して本質ではないが、ロックそのものがそういった要素を少なからず孕んでいることは間違いない。ポスト・ロックとかシューゲイザーが信念を頑なに守り抜くことで手にしようとしたロマンを、彼らは豊かな想像力で掴み取ったということだ。


No.35
19 / Adele

Adele-19.jpg
喪失の歌姫
 このアルバムの収録曲のほとんどは、彼女がかつて付き合っていたひとりの男性に向けられたラヴ・ソングで占められている。収録曲の実に九曲は、相手の浮気が原因で二人の関係が破綻してしまったまさにその時期に書かれている。クリエイションの源はエリック・クラプトンと似ているのかもしれない。悲しみの淵で立ち尽くした彼女は、ギターを抱え、言葉を吐き出すしかなかったのだと思う。イギリスでは当然のように一位を獲得し、アメリカでも大きなヒットを記録した本デビュー・アルバム。特に端正な顔立ちなわけでもないひとりの女性が身を切るようにしてひとりの男性への思いを告白した非常にプライヴェートな内容である本作が、どうしてこんなにも広く世界中で支持されたのだろう。普通の恋愛をし、普通の破局に普通に悲しんだ彼女の普通のラヴ・ソング。でも、そこに普通じゃない歌声が乗せられた瞬間、ここに収められたラヴ・ソングは『19』という消えない傷跡にも似た永遠の刻印としてすべての時を止めてしまった。彼女はすでに20歳になってしまったが、“チェイシング・ペイヴメンツ”は再生ボタンひとつで何度でも彼女の終われない19歳を繰り返し続けるだろう。アデルの歌声を体感してみて欲しい。喪失の雷に打たれたあなたの心はきっと、その膨大な悲しみに感電する。


No.34
Konk / The Kooks

The Kooks-Konk
とにかく“スウェイ”を聴け
 どうしようもなく溢れてくるメロディを、その勢いにまかせてただがむしゃらにガチャガチャ鳴らしていた若く奔放なバンドが、自分たちのメロディに自覚的になり、音の構成にまで磨きをかけようとしたらいったいどうなるか。クークスのセカンド・アルバムである本作は、そんな試みが見事に結実した素晴らしい作品である。ルークは音に空間性を求めたと言っていたが、要はメロディを核に据えたまま、立体的な音の立ち上がりを見せたかったということだ。実際に、曲が盛り上がれば盛り上がるほど音の存在感が高く屹立するような、ギターとベースとドラムだけの極々基本的な組み合わせなのにものすごい高揚感を見せる。でも、空間処理うんぬんなんて本当はどうでも良いのだ。このアルバムが素晴らしいのは、そこにロックンロールの突破の熱さがほとばしっているからだ。ファースト・アルバムの『インサイド・イン/インサイド・アウト』は良くも悪くも大人しいアルバムだった。音が静かとかそういう意味ではなくて、バンドとしての向上面において、彼ら自身がまだ意識的になれていなかったのだ。でもこのアルバムは違う。セカンド・アルバムに付き物のプレッシャーも大きかっただろうが、それを正面から突破する力強い意思が感じられる。クークスが本作で手に入れたロックンロールの本当のグルーヴとは、そういうものだ。


No.33
Melodia / The Vines

The Vines-Melodia
本物の才能は繰り返される
 シドニーが生んだ世界一の無自覚・無意識・無責任ロックンロール・シンガー、クレイグ・ニコルズ。ロックンロールへの欲求のためなら自分を傷つけることさえ厭わなかった彼の、ロックンロールをするためだけに生まれ持ったかのような才能は、その無自覚・無意識・無責任さ故にバンドのキャリアを余りにもはっきりと光と影の極端で塗り分けてしまった。真っ黒に塗りつぶされた内省と暗黒の極点を映し出した前作『ヴィジョン・ヴァリィ』からいつもどおり約二年ぶりに発表された本作は、クレイグ・ニコルズというトゲだらけの才能が見事に返り咲いた華々しい復活作となった。もうとにかくひたすら曲が良い。“ゲット・アウト”や“ヒーズ・ア・ロッカー”のような刹那を更に切り刻む得意の必殺チューン満載、14曲を32分で突っ走る恐ろしく風通しの良いアルバムだ。しかし最も印象的なのは“トゥルー・アズ・ア・ナイト”の存在。ほとんどが2分前後の収録曲の中で唯一6分を消費するこのバラードは、瞬間を生きてきた男がまるでロマンティックな永遠に思いを馳せているみたいで興味深い。とは言えクレイグの才能の本質はまったくと言って良いほど変わっちゃいない。一曲一曲が音楽の破壊と再生。ここまですべてがポジティヴな方角を向いているのはデビュー作以来か。


No.32
Music For An Accelerated Culture / Hadouken!

Hadouken!-Music For An Accelerated Culture
プレイステーションから飛び出した僕たちのヒーロー
 07年に引き続き08年にも多くのニュー・レイヴ系バンドがデビューを果たしたが、その多くが無駄にギャラクシーな雰囲気を纏ってそれらしい音を鳴らしていた中で、ハドーケン!はそんなムードだけの連中とは明らかに違っていた(バンド名とジャケはアホらしいけど)。そもそもニュー・レイヴには言葉の意味がなさ過ぎである。ジェネレーション・ミュージックから言葉がなくなってどうする。そういうわけで、ハドーケン!は本物である(バンド名とジャケには説得力がないけど)。都会の暗がりの奥底から若者の心を狙い撃ちするようなとにかく軽やかで素早い言葉とサウンド。そこにはこんなんで終わって堪るかという反骨精神もちゃんと宿っていて、刹那に散っていく若者文化にムードの共有だけではない意味を持たせようとしているところが良い。ネットの普及によって様々な文化・事象がいとも簡単に驚くべきスピード感覚でクロスオーヴァーを成しえてしまう21世紀というこの加速時代。バンド名とジャケのくだらなさが手伝ってか「突然変異」として扱われがちな彼らだが、これはむしろますますスピードを上げて進み続ける新時代の「正しさ」である。乱雑なクロスオーヴァーは一見節操がなさそうだが、そんな中からでも意識は確かに生まれている。僕たちはただこれにしがみついていくしかない。


No.31
22 Dreams / Paul Weller

Paul Weller-22 Dreams
人生の深まりがひとつの物語を作っている
 ミュージシャンだって年を取れば普通のオヤジである。体のことだって気になる(ツェッペリンは復活ライブで温かい紅茶を飲んでいたらしい)し、若い頃と同じようにはいかないだろう。過去の功績にしがみついて自分を絶対化した挙句に一番惨めな結果に終わることだってある。77年のジャム『イン・ザ・シティ』から31年、昨年5月に実に50歳の誕生日を迎えて枯れていくどころかいっそう色鮮やかに才能を開花させていく永遠のモッド・ファーザー、ポール・ウェラー。08年、彼が発表したソロ9作目となる本作は、めでたく全英一位の快挙を成し遂げた。しかしその内容は過去の栄光の焼き増しなどではなく、「挑戦」の一言が似合う非常にアグレッシヴなものだった。歌モノにこだわり続けた彼にしては珍しくインスト曲が何曲か挿入され、アレンジも幅の利いた多彩でスペクタクルなアルバムになっている。守りに入ったとしてももはや誰も責めないだろうに未だに自分の表現を深めようとするこの姿勢にはホント頭が下がります。オアシスのノエル&ゲムやグレアム・コクソンなど制作に参加した愛弟子たちは今回も錚々たる顔ぶれだが、それも彼の人徳のなせる業だろう。決してコンセプト・アルバムではないが、夢のようなカラフルな音楽体験をした彼が再び家に帰ってくるような、一枚で聴かせる感動的なアルバム。
スポンサーサイト



02:05 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
No.30~No.21 | top | No.50~N0.41

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/612-fc81f70c