FC2ブログ

まなざし

まなざし
未だかつてこんな鋭い眼差しで見つめられた経験はない。
すべてが見透かされて、見抜かれて、射抜かれてしまいそう。
この眼が無言で語るもの、それがそのままフィオナ・アップルの音楽になっている。

すべての嘘は暴かれる。
彼女はマグマの赤黒さを知っている。
彼女は、真実を見つめている。

Tidal
/ Fiona Apple

Fiona Apple
「私」を殺すラヴ・ソング
 18歳の頃、自分は何を考えながら毎日を過ごしていただろう。自分が歩んできた18年の道程を振り返って、それを「人生」と呼ぶことなんてできただろうか。「だからみんな私を暗い女の子と呼ぶのかしら。私がかつては深く静かな海を渡っていたことを知らずに。だけど彼は私を浜に打ち上げて大切な真珠を奪った。そして私の空っぽの貝殻を捨てていったのよ」。12歳でレイプされたことをこうまで痛々しく告白した少女はそのときまさに18歳。自分の人生に突き刺さった刃で自分を傷つけることでしか癒すことのできない病を抱えたかのような血の滴るリリック。ジャズからの影響を多分に受けた余りに大人びたサウンド。深海の奥底から唸りを上げるような歌声。その歌は、凄まじく圧倒的だった。後に発表された2枚のアルバムでも彼女の表現はこのスタンスからまったくブレていない。彼女が自分を苦しめるトラウマを歌うことに執拗にこだわるのは、心に傷跡という消えない刻印を残すものだけが彼女の把握し得る世界のリアリティだからだ。それは決して視野が狭いということではない。彼女は、若くして「知ってしまった」だけだ。
 全米だけで300万枚を売り上げた本作の破格の成功は、彼女にMTVアワードやグラミーの栄光をもたらした。その授賞式で、彼女はこう言い放っている。「こんな世界は最低よ!」、と。「波の押し引き」と名付けられた本デビュー・アルバム。この時点ですでに彼女は自分が世界という巨大な波に飲み込まれてしまっていることを無意識に自覚していたのだと思う。だから、彼女は何度でも自分を殺す。自分を苦しめる世界に復讐するために、世界を殺すために、どんなに足掻いても世界の一部でしかない自分を、彼女は殺す。だからこそ彼女の闘いはどこまでも果てしないのだ。
スポンサーサイト



01:04 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
米焼酎 | top | ポール・スティール

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/553-d09979bf