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ファンタジーは現実逃避じゃない

星新一
今日ブック・オフで買ってきた本。
星新一の作品は昔から大好きだったけど同じ本ばかり繰り返して読んでいたので、
今まで読んだことのない作品を買ってみた。
『ブランコのむこうで』。

ひょんなことから、人々の夢の中に入り込んだり、
その人の実生活を覗くことができるようになってしまった少年のお話。
ブランコをこいで前に揺れたり後ろに揺れたりするみたいに、
少年は夢の世界と現実世界を何度も行き来しながら、
夢とはなんなのか、現実を生きるとはどういうことなのか、
という難題に、ひとつの答えを見出していく。

ブランコに乗っている時は、前にこいでも後ろに揺られても、
結局は同じ場所からまったく動いていない。
夢と現実もそうなんじゃないか、と星新一はこの作品で言っている。
夢も現実も、結局は僕たちを前に進めることなんてできないのだ。
「ブランコのむこう」へは、連れて行ってはくれないのだ。
だからこそ僕たちはブランコを降りて、自分たちの足で地面を踏みしめて、
「ブランコのむこう」に向かって、歩いていかなければならないのだ。

夢を捨て、現実逃避をする、という意味ではもちろんない。
現実があるからこそ夢であり、
夢があるからこそ現実なんだ、
と両方を等しく肯定することで得たある種の「達観」が、
あっちへこっちへ揺れるブランコから少年を降ろさせた。
もう大丈夫だから、と。
少年は、もう夢と現実の狭間で戸惑ったりはしない。
もうブランコに揺られなくても、少年は夢も現実も、自分のものにできる。
自分の足で、生きていける。
星新一のファンタジーが伝えてくれるのは、いつだってその希望だ。


もちろんCDレヴューも書く。
今日は昨日に引き続いてザ・ヴァインズの最新作。
ナンバー・ワンかどうかは判断しがたいが、
ヴァインズ史の中で最も重要な作品であることは間違いない。

Melodia
/ The Vines

The Vines-Melodia
これがヴァインズのロックンロールだ
 ザ・ヴァインズ4作目のオリジナル・アルバム。前作『ヴィジョン・ヴァリィ』以来2年ぶりとなる本作は、“ゲット・アウト”という曲で幕を開ける。その名のとおり、バンドを取り囲む数々の障害――どん底からの復活だとかアスペルガーだとか本作制作にまつわるあらゆるプレッシャーだとか――から飛び出して、まさに「解放」されたような風通しの良いアルバムだ。“トゥルー・アズ・ザ・ナイト”という6分にも及ぶ大曲がべらぼうに良い。ヴァインズ史上最長となるこの曲ではストリングスを大々的に取り入れて新スタイルの「構築」に力を注いだと思えば、メランコリックなメロディから不意を衝いて暴力的なエネルギーを爆発させる“メリーゴーラウンド”のような得意の「破壊」行為も好き勝手やっている。14曲32分というこの小さなフォーマットの中で「構築」と「破壊」を自由自在に繰り返しながら転げ回る予測不可能のロックンロール。やはりヴァインズはこうでなければならない。“A.S III”という楽曲も収録されていて、これは言うまでもなく“オータム・シェイド”の第3進化形態である。初期作を共に作り上げたロブ・シュナフと再び袂を連ねて制作にかかった本作だが、『ハイリー・イヴォルヴド』を初めて聴いた時のあのとんでもない感じが完全に復活している。それもぐるりと一周してもとの場所に帰ってきたという単純な原点回帰ではなく、デビューから6年にわたるキャリアを通して他の誰でもない彼ら自身が発見してきた様々な「ザ・ヴァインズ」を全面的に受け入れることで「深化」したような、バンドがひとつの峠を越えたことを物語る素晴らしい快作だ。アートワークも、内省を黒く塗りつぶした前作とは打って変わって「俺が俺が」な感じのするものに仕上がっていて、現在のバンドの状態が非常にポジティヴであることがヒシヒシと伝わってくるところが嬉しい。
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