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憂鬱とロマンの人

Alone With Everybody
/ Richard Ashcroft

Richard Ashcroft-Alone With Everybody
リチャード・アシュクロフトの世界
 棘みたいに心に突き刺さって、すっかり抜けなくなってしまった。「この世界はお前なしではあり得ない」。収録曲“クレイジー・ワールド”の中で歌われているこの言葉が妙に気になって、いったいどういうことなのかずっと考えていた。一見愛する者に「お前なしでは生きていけない」と歌っているように思えるかもしれないが、その解釈だと歌詞全体の文脈といまいち合致しない。たとえその通りであったとしても、ザ・ヴァーヴというバンドのフロントマンとして、生と死、希望と絶望といった引き裂かれた対極の間を何度も彷徨ったこの男の口から発せられたとなると、話は少し変わってくる。ヴァーヴにとって、対極を行き来することとはその間に横たわるすべてを受け入れようとするがむしゃらな旅だったのだと思う。生と死も、希望と絶望も、紛れもなくここにあるじゃないかという宿命を、不可避の諦念から祝福にまで昇華させる長い道のり。その果てしない距離感と不確実性は彼を幾度となく疲弊させ、バンドは何度も解散と復活を繰り返した。ヴァーヴ最後のアルバムと思われていた『アーバン・ヒムス』から三年後に発表されたリチャード・アシュクロフトのソロ第一弾である本作は、そんなヴァーヴの旅にひとつの決着をつける、三年越しの「回答」としての意味合いを期せずしてはらんでいた。それが、この言葉である。差別も犯罪も戦争もいつまでたってもなくならず、いったい何を信じれば良いのかすらわからない「混乱した世界」。嘘も裏切りも絶望も、間違いなくこの世界には存在している。そんな荒れ果てた世界の中で最も美しいものとは、劣悪な環境にも屈することなく芽を出そうとし続ける生命の力強さなのだとこの男は歌っている。この言葉は、万物に向けられている。すべての生命が共に希望と絶望を共有しながら回転し続ける世界。それを内包しようとした彼の歌には、だからこそ凄みと深みがある。
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