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ありがとう、ブラック・パレード

The Black Parade Is Dead!
/ My Chemical Romance

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そして、希望が残った
 そうだ。やっぱりこれだったんだ。これがマイケミだったんだ。「ブラック・パレードは死んだ!」。グランド・フィナーレである“フェイマス・ラスト・ワーズ”を見事に歌いきった直後、ジェラルドは高らかにこう叫ぶ。悩める若者の身代わりのごとく彼らの孤独も恐怖も絶望も一身に引き受けて「死」へと向かうはずだったあの妄想のパレードは、若者からの歓迎と大人からの誤解と揶揄を同時に浴びながら世界中を練り歩き、この日、メキシコシティでついに終焉を迎える。
 歓声の中を無感情に鳴り響く心電図の音。“エンド”から始まり、“デッド”へ。パレードはやはり今夜も「終末」と「死」から始る。「俺たちはブラック・パレードだぁ!」とジェラルドは名乗り、バンドは自分たちの生み出した架空のパレードを忠実に再現していく。「死」を「生」に、「闇」を「光」に、「絶望」を「希望」に転換させるための壮大で苛烈で過剰なエネルギーを爆発させながら、ブラック・パレードはまた若者を救おうと、若者は救いを求めようと、互いに声を張り上げる。そして、クライマックスに達し会場中が絶頂感に酔いしれる中、歓声に見送られるようにして、ブラック・パレードは死んだ。
 不安と疎外感を抱くすべての若者に居場所を与える幻のパレードは、その瞬間、幻のまま僕たちの目の前から消え去った。ジェラルドは、ブラック・パレードは、再び僕たちに孤独と恐怖と絶望を引き渡す。そう、ここなんだ。ここは終わりじゃない。ここから始まるんだ。“ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード”でジェラルドが何度も何度も繰り返し歌っていたあの言葉は、ここで初めてその有効性を発揮することができるんだ。その言葉とは、つまり、「僕たちは続く」、である。
 そう、「僕たちは続く」。これが揺るぎない前提なんだ。何を始めるにしても、何を終らせるにしても、僕たちはこれだけは変えられないんだ。ブラック・パレードが死のうが死ぬまいが、それでも「僕たちは続く」。孤独も恐怖も絶望も、終らない。幻想から、夢から覚めて、僕たちはまた現実の自分を取り戻した。ブラック・パレードの死は、現実の夜明けである。
 幕開けの「エンド」で早くも最高潮に盛り上がっている若者が必死で「セイヴ・ミー!」と叫ぶ姿を見て、大人はまたいかがわしい新興宗教みたいな印象を受けるんだろう。ジェラルドの最後の宣告を聞いて、また「死」を売り物にしているとかいうとんでもない勘違いをするんだろう。ここに集まった若者はマイケミに本気で救いを求めている。マイケミがブラック・パレードを作り出した理由も、学校でいじめられていたかつての自分のような弱い若者を、安っぽい慰めや同情心ではなく、本気で救い出すためだった。ブラック・パレードという幻は、絶望した若者に、大丈夫なんかじゃない少年少女に、本気で希望を与えるための渾身の妄想だった。
 「ブラック・パレードは死んだ!」。自殺を助長しているように聞こえるか? 軽い気持ちで「死」を連発して、売り物にしているようになんて聞こえるか? 僕には、「君たちはもう大丈夫だろう? もうブラック・パレードがいなくたってやっていけるだろう? また君たちに孤独と恐怖と絶望を返すけど、それを受け取る君たちは、かつての君たちとは違うはずだ!」というファンへの絶対的な信頼の雄たけびに聞こえる。これが、マイケミの思い描いた希望だ。
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