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今月のLP 8月

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実はTシャツはYUKIなのですが、今月のLPは民生です。
奥田民生が98年に発表した三枚目のアルバム『股旅』。
最終曲として“イージュー★ライダー’97”が入っている。
民生が自分のロックンロールについてダラダラと語った、良い歌である。

もうほとんどわかっていると思うけど、
僕はロックに関してはとことん汗臭い根性主義である。
ミニマムに、スタイリッシュに削ぎ落とされた知的なロックや
流麗なストーリー・テリングには、例外もあるけどあまり食指が動かない。
ロックンロールは夢を見続ける根性で勝負である。
小手先の技術やセンスじゃ、夢見るド根性には絶対に追いつけない。
そして、そういうド根性ロックは、どんどん少なくなってきている。
ここ数年の間に登場した若手の中で、
根性で僕を動かしたのはザ・ヴューだけだった。
もしかしたら“イージュー★ライダー’97”みたいな歌には、
これからはほとんどお目にかかれない時代なのかもしれない。

この歌は、ドライブの歌だとよく言われる。
それは確かに間違いないのだけど、この歌がドライブを連想させるのは
あくまでそういう「風景」が後ろにあるということに過ぎない。
奥田民生がこの歌で言っているのは、
自分がなぜロックンロールにこだわり続けるのかということ。
「終わらないロックンロールについて」である。

「僕らの自由を 僕らの青春を」
というフレーズが有名だけど、
ここだけでこの歌はすべてを言い切っている。
自由だったあの頃を、若くおろかだったあの頃の自分を、
思い出しながらこの男はこう歌っているのではない。
自由も、青春も、まだ終わってなんかいない。
僕らのロックンロールは、終わらないのだ。

時を止めるロックンロールというものがある。
YUKIの『PRISMIC』なんてまさにそれで、
いつだってそこにすべてを引き寄せ、時間さえも吸い寄せ、
聴き手をその作品の「始まり」に引き戻すような奇跡。
すべてをその「始まり」の時点で止めてしまうから、
そのロックンロールは、いつまでも、永遠に、終わらない。

奥田民生のロックンロールは、時を止めなかった。
ただ気の知れた仲間としゃべりながら車に乗り込んで、
向こうへ、向こうへと走り続けただけだった。
時が流れるのなんて気にもしないで、走り続けただけだった。
そして、今も走り続けているというただその一点のみによって、
奥田民生のロックンロールは、終わらない。
ロックンロールは、多感な十代を生きる若者だけの特権じゃない。
僕たちがそうさせない限り、僕たちのロックンロールは永遠に終わらないのだ。

「気持ちのよい汗を けして枯れない涙を
幅広い心を くだらないアイデアを
軽く笑えるユーモアを うまくやり抜く賢さを
眠らない体を すべて欲しがる欲望を」
これが全部揃えば完璧なのに、とでも言うように、
奥田民生は最後にこう歌う。
でも結局、そんなもんひとつもなくたって、
俺のロックンロールは終わらないとこの男は歌う。
全盛期なんかとっくの昔に過ぎた中年オヤジが
今でも相変わらずダラダラとこの歌を歌っているのは、
ロックンロールに対する絶対的な信仰以外の何物でもない。
だから今でも奥田民生がギターを抱えて己のロックンロールを謳歌する姿は、
「うまくやり抜く賢さ」にすぐに頼りそうになってしまう僕たちには、
眩しい。
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