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新世代の息吹き

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クラブ・ミュージックとしては異例の米英同時一位を達成し
見事なまでのグローバル・サクセスを手に入れた
90年代レイヴの最高傑作、プロディジーの『ファット・オブ・ザ・ランド』。
そして、新世代レイヴ(ニュー・レイヴ)発起人であるクラクソンズと、
クラクソンズに続いて今年デビューを果たしたハドーケン!。

今こうやって聴き比べてみると、一連のニュー・レイヴ・ムーヴメントは、
かつてプロディジーが鳴らした、洗練されたプロダクションによるマッシヴな音の「力」を、
それによってもたらされた興奮と感動を、
編集センスやアイディアの奇抜さという
ハンド・メイドなレベルで再現しようとした営みなのかなと思う。
だからこそニュー・レイヴでは経験や知識ではなく
ほとんど先天的な皮膚感覚の鋭さが求められるのであって、
ニュー・レイヴという雑なくくりで語られる多くのバンドが
表面上のカルチャーな部分でしかその責任を果たせていないのは、
きっとそういうことなんだと思う。
そして、クラクソンズとハドーケン!のデビュー・アルバムは、
そんなほとんど中身を伴わないニュー・レイヴ・ムーヴメントの中で、
明らかに秀でていた。
ただ踊れてノレるだけではない、
自分たちだけのアイディア構築論を持っているのは、この二組だけだ。
クラクソンズ、ハドーケン!に続くレイト・オブ・ザ・ピアは決定打になるか。
ニュー・レイヴは、プロディジーを超えられるか。
すぐに終わっちまう動きかと思ったけど、案外面白いことになってます。

とまあ一旦レイヴ・シーンを自分の中でまとめ上げて、CDレヴューへ。
ここでハドーケン!のレヴューでも載せれば気の利いたブログになるんだけど、
僕はそんなにうまくやれません。
今書きたいものを、書きます。
というわけで、今日はカニエ・ウェスト。
今日ある映画を観て、9.11以降のアメリカについてまた一層考えさせられた。
カニエは、9.11以降の僕たちの生活を、
作品として細かく具現化してきた数少ないヒップホップ・アクトのひとりだ。

The College Dropout
/ Kanye West

kanye west
ヒップホップ新時代を拓いた傑作アルバム
 イギリス人の先生に「NAS、ジェイ・Z、エミネム、次は誰なんだろうね、コウダイ」と聞かれたことがある。「今はカニエがいるよ」と言ったら「でもカニエは前からプロデュースとかしてたしスキルもあんまりだし、なんか違わない?」と言い返されてその時は「まあ確かに」と思ったが、それでもカニエのこのラッパーとしてのデビュー・アルバムほど21世紀を生きる僕たちの目線を強く意識して作られたヒップホップ・アルバムはない。意味を失いカネとオンナと車の自慢しか歌わなくなったまがい物のヒップホップが氾濫する中で、カニエの登場はあまりにも画期的な事件だった。
 実際に学校を中退した者でなくても、未だに分離的な扱いを受ける黒人でなくても、きっとこのアルバムはあなたの心に届く。学校でも職場でもどこでもいいのだが、集団生活に埋もれパッとしない存在としての自分を知っている人なら、きっと感動すると思う。うだつのあがらない自分にイラつきながら、それでも歩き続けるしかないというポジティヴィティをあなたと共有するために、カニエは笑いも皮肉も落胆も織り交ぜながら自らのバイオグラフィーを饒舌に語り始める。今じゃクマさんはカニエのトレード・マークのひとつだが、ジャケットでその着ぐるみをかぶって彼が顔を隠しているのは、このうなだれたクマさんは「あなた」でもあるからだ。そこの部分に何よりも意識的だからこそ、「もう神に祈るしかない」と歌いアルバム中で明らかに異質な空気を放つ“ジーザス・ウォーク”のシリアスな緊張感でさえ、9.11以降のにっちもさっちもいかない世界を生きる僕たちのシリアスだった。ルーツも有効性も一切知らない日本のヤンチャな中高生だってなんの気負いもなくヒップホップを聴く時代である。だからこそ、ヒップホップは今こうやって響くべきなのだ。
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