FC2ブログ

スピリチュアル

spritualized.jpg
これ、ジャケットが立体仕様になっているのがわかっていただけるでしょうか?
90年代に『宇宙遊泳』という大傑作を発表して
最強最大のスペース・ロックを完成させたジェイソン・ピアース率いる
スピリチュアライズドの『レット・イット・カム・ダウン』という作品なんですけど、
この不気味な女の子の顔が内側にへこんでるんですよね。
まぁ一言で言えばひどく悪趣味なデザインなわけですけど、
これ、手前とか奥に傾けて見たら影の具合で女の子の表情が変わるんですよね。
頭の方を手前に傾けたら顔全体に影がかかって怒りの表情になったり、
逆に奥に傾けると光が差してニマッと笑ったりするのです。
本当に薄気味悪いのですが、これが案外バカにできないんですよ。

『宇宙遊泳』以降の作品はほとんどすべてに当てはまるんですけど、
ジェイソン・ピアースの曲ってアレンジも歌詞も過剰の極みに到達しているんですよね。
大聖堂がピッタリのゴスペル・コーラスとオーケストラ・アレンジに
天国に浮かび地獄に沈むような極端な歌詞世界。
その落差の激しさに毎回貧血を起こしそうになるのだけれど、
これはまさに表情の激変する女の子なのです。
鬼の形相からエビス顔へ。
それに、この女の子は決して生身の人間じゃ背負えない「あっちの世界」の感覚、
「神秘」とか「畏怖」とか「崇高」みたいな、
都合の良い言葉で言っちゃえばとにかく「スピリチュアル」な感覚を、
見事に表現していると僕は思うのです。
まさにスピリチュアライズドの世界なのである。
そこまで意識してデザインされたのかどうかはわかりませんけどね。

この『レット・イット・カム・ダウン』は一番好きだな。
ホント、バカみたいにバカでっかいスペース・ロックなんですよ、これ。
キャリアの隆盛そのものと相俟って激しい興奮を誘うのは『宇宙遊泳』だけど、
『レット・イット・カム・ダウン』の、このやりすぎな感じがとても好きだ。
ジェイソン・ピアースはこれで思い切り突き抜けることができた気がする。
僕は、政治家には、政治家だったら、表では偉そうに正論を唱えていても、
裏では思い切り悪さをして欲しい。
本当に、胸を掻き毟りたくなるようなタチの悪い悪さをしていて欲しい。
クリーンな政治家なんて、反吐が出る。
政治家だったら、思い切って悪に全身浸かっちまえよと思う。
それと同じような感覚だ。
ジェイソン・ピアースなら、思いっきりイッちゃえよ。
背徳感なんて振り切って、ハイになっちゃえよ。
『レット・イット・カム・ダウン』は、そういう意味で本当にやっちまった作品である。
好きだなぁ。

というわけで、今日はもちろんスピリチュアライズドの作品。
まだ発表されて一週間のホヤホヤの最新作です。
タイトルの“A & E”とは「緊急救命室」のこと。
実はこの男、ずっと病魔で倒れていました。
死の一歩手前まで踏み込んだ男の奇跡の復活作です。

Songs In A & E
/ Spiritualized

6a00d83451b93369e200e5524593a58833-800wi.jpg
スペース・ロックは手術中
 百人以上のオーケストラ&ゴスペル隊をスタジオにそのままぶち込んで大胆に製作されたキャリア史上最大規模の『レット・イット・カム・ダウン』が象徴的だが、ジェイソン・ピアースの本来の作曲スタイルとは、ゼロ地点からピアノと頭の中だけで試行錯誤を繰り返して一発で巨大オーケストレーションを組み立てる極めて突飛な手法であり、だからこそこれまでのスピリチュアライズドの作品はどれも宇宙の果てまで届くような凄まじい過剰性を伴ってきた。肺炎に倒れ一時危篤状態にまで追い込まれたこの男は、実に5年ぶりとなる本作でその方法論をかなぐり捨てて、これまで意図的に避けてきたアコースティック・ギターによるシンプルかつ基本的な作曲スタイルを選び取った。
 だがしかし、その方法論の激変が楽曲に結果としてヴィヴィッドに結びつくことはあまりなく、シンプルな弾き語り曲も収録されているもののゴスペル調コーラスの高揚感や壮大なオーケストラのアレンジは本作でも健在である。ジェイソン本人はベッドの上での臨死体験と本作の内容の因果関係をかたくなに否定しているが、僕はあながちそうとも言い切れないような気がしている。ベッドの上で生死の狭間を行き来する自分を目撃した彼の意識は、少なくともこれまでになく内に向かったはずである。アコースティック・ギターという「ひとり」から始まり壮大なオーケストレーションという「みんな」に少しずつ近づいていった本作と向き合うことは、そんな彼にこれまでの自分の作曲作業のプロセスをひとつひとつ細かに分析しそれを積み重ねる、一種の「批評力」を必要としたのではないだろうか。自身の方法論をいったん批評し、ここから更なる高みに踏み出そうとしているのではないだろうか。正直、まだまだパワー全開ではない。「こんなもんじゃない」と思うが、まだジェイソンは前に進める気がするし、彼にその意志はある。とにかく、そういう意味でも復帰作という意味でも重要作であることだけは間違いないです。聴くべし。
スポンサーサイト



01:15 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
世界を塗り替える音 | top | 08年上半期ベスト・アルバム

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://overtheborder.blog64.fc2.com/tb.php/405-ba57f1b4