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これがエレカシだ

STARTING OVER
/ エレファントカシマシ

エレカシ

これがロックンロールでなくて何なのか
 あなたは、なぜロックを聴くのか。僕は、未来が不安だから、日々を送ることがどうしようもなく不安だから、ロックを聴いている。そんな不安を自分の中で少しでも誤魔化してやるために、毎日飽きもせずにロックと呼ばれるものを聴いて過ごしている。将来、自分はどんな人間になっているのか。大好きな女の子からメールの返事が急に来なくなった。そんな単純でくだらない、でもちっぽけな自分にはとてつもなく絶対的な不安に押しつぶされないように、そんな不安から身を守るシェルターとして、ロックを聴いている。逃避手段である。しかも、その場しのぎの、絶望的な。ロックを聴いても僕の将来の夢は叶わないし、大好きな女の子からのメールが返ってくることもない。最後に残るのは、最初から最後まで独りぼっちの自分だけだ。

 最近、僕と深く関わったある人に、「音楽がこんなに孤独だとは思わなかった」と言われた。ここでいう「音楽」とは、もちろんロックのことである。そのとおり。ロックは、そういう音楽である。誰かと必死に繋がろうとしても、結局自分は引き裂かれた「ひとり」でしかないということを認め、だからこそ悲しくなるほどに自力でそんな自分を乗り越えていかなくてはならない音楽である。やる側にとっても、聴く側にとっても、絶対にそうだ。誰も見ていないところで血が吹き出るほどにもがき苦しんで、「自分を乗り越える」だなんてよくわからない曖昧な感触を探し求めて、果たしてその行為にどんな意味があるというのか。不安を振り払うどころか更に自分を追い詰めて、絶望のどん底に連れていって、未来の光なんて、いったいどこにあるというのか。

 勘違いしないで欲しい。ロックは、本当のロックンロールは、それでも、そこから始めることができる。自分がどうしようもなく無力であり、負け犬以下のクソであり、でも、「それでも生きている」というたったひとつの揺るぎない事実に直面した時、あなたはその時に、いったいどうするのか。ロックが聴き手に求める答えは、そこだ。そこで、「それでも俺はすべてを乗り越えてみせる」と宣言するのが、ロックンロールである。それにビビッて夢を停滞させた大人なんかになってたまるか。俺の、目と、耳と、口は、いったいなんのためにこの情けない顔にくっついているのか。夢を諦めた自分に同情の眼差しを向けてやるためなんかじゃない。自分のボヤキを自分で聞き入れてやるためなんかじゃない。週末にビールを飲みながらバカな上司の愚痴をこぼすためなんかじゃ、絶対にない。俺は、自分の情けない姿なんてこの目で焼き尽くして、ゴチャゴチャうるさい自分の嘆きなんてこの耳で叱咤して、いつまでも付きまとう人生の不安なんかこの口でいつか噛み殺してやる。自分の力で自分自身にも打ち勝てないようなやつが、いったいどうやって他の人間を乗り越えられるというのか。そんなやつにロックンロールができてたまるか。そんなやつに本当の夢が見られてたまるか! そんなやつに、この俺が負けてたまるかってんだ!!

 そんなわけで、“俺たちの明日”は最高である。08年、この曲以上のロックンロールはありえない。「さあ がんばろうぜ!」「負けるなよ そうさ」「でっかく生きようぜ!」。思いの丈をそのまま言葉にしたような、どストレートな歌詞がすべてを押しのけて聴き手の心を直撃するこの曲。宮本浩次、実に42歳。今年でデビューから20年を数える大御所ロック・バンドのフロント・マンとして叫ぶには余りにもガサツでダサいこの歌詞は、何回も繰り返して聴くと、このCDを手に取ったみんなだけではなく、歌い手本人にも強く向けられていることがよくわかる。言い訳だけうまいような男にはなりたくない。負けることから逃げるような生き方はしたくない。夢のためなら死ぬまで頑張ってやる。熱苦しいって? ちょっとそこの君、ロックンロールを甘く見てるんじゃないかい? 熱くならずにロックンロールなんかできやしねーんだよ! ビビッてなんかじゃ夢なんて見られやしねーんだよ!! ロックンロールの夢と希望をなめるな!!と言いたい!!!

 僕は、これまでのエレカシを無知といっていいほど何も知らない。でも、この曲は、僕がイメージしていたエレカシそのまんまの姿だった。ファンに言わせるとどうやら本作からエレカシは少し変わったらしい。それは僕にはまだよくわからない。このアルバムは、どうやら当初は『エレファントカシマシ』というダサいセルフ・タイトルになる予定だったらしい。「これがエレファントカシマシだ」、と。20年のキャリアを経て、ついに丸裸の自分たちを曝け出そうとした中年オヤジたち。それが今のエレカシだ。だから、「頑張ろうぜ!」なんて歌えたのだろう。ここまで究極に単純な言葉に、夢と希望とロマンを詰め込んで、思いっきり聴き手が受け取りやすい形で、今のエレカシはロックンロールをやっている。ロックンロールの夢をここまでおおっぴろげにこじ開けて熱く歌うバンドが他にいるだろうか。僕は、ちょっと思いつかない。
 
 ロックは孤独な音楽だと書いた。このアルバムを聴いた今も、その意見はまったく変わっていない。ただ、でもだからこそロックには果てしない夢がある。未来がある。誰が何と言おうと、絶対にある。それがないなら、ロックなんてこっちの方からおさらばである。孤独な自分を乗り越えられた時、ロックは、きっと何かと繋がれる。誰かと繋がれる。未来を切り開ける。だから、“「俺たち」の「明日」”、なのだ。その未来が実際にやってくるかどうかを検証する必要はどこにもない。ただ、そんな未来を信じる勇気を少しでも多くの人に伝えるために、いい歳こいて未だに「頑張ろうぜ!」なんて叫んでいるオヤジたちがここにいるということに、僕は猛烈に感動している。これが肯定できないような自分なら、俺はロックンロールを聴くのなんてキレイさっぱり止めてやる。
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03:27 | 音楽 | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑
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コメント

# うおお!
なんか、泣けてきました(何)
エレカシって格好いいバンドなんだぜ!とか
最高にしびれるんだぜ!とかいったとしても、実際に音楽を聴かないと分かりませんよね・・・気が狂ってて何が言いたいのか笑

STARTING OVERって最初、どろっどろの闇な感じのエレカシにハマっていた私にとっては一曲一曲が軽くて凄くもやもやしていたんですが、きっとエレカシってこんな「頑張ろうぜ!」なんて歌うようなバンドだと認めたくなかったんだと思います。もっと自分と自分を対立させて、死や人生、などを歌うバンドだなんて思っていたかったんだと思います。

町を見下ろす丘、という一枚は本当にSTARTING OVERと違うエレカシが見られて美しい一枚です。ぜひ!(・・・)
鹿嶋市宣伝社員ミカでした←←
by: ミカ | 2008/07/10 23:37 | URL [編集] | page top↑
# ミカさんへ
確かに、ミカさんのブログを見ていると、エレカシは常に闇を抱えたバンドのように思えます。
というか、実際にそうなんだと思います。
でも、僕はまだ過去作は聴けていませんが、
その闇は、ネガティヴとは決して同義でないはずです。
闇に身を浸していても、それでもエレカシが向いていたのは、
「笑顔の未来」であり、「俺たちの明日」の方角だったんじゃないでしょうか。
エレカシが「死」について歌うのは、「生きる」ためだったからではないでしょうか。
『STARTING OVER』を聴くと、そんな感じがします。
そして、ミカさんも書いていたとおり、エレカシはそんな自分を超えたからこそ、
「頑張ろうぜ!」なんて究極の常套句を叫べたんではないでしょうか。
だから、僕は、なんというか、
「頑張ろうぜ!」の一言には無責任な楽観ではなく、
とてつもない包容力を感じます。
説得力なくてすんません。

これから逆算的にエレカシを遡っていくつもりです!
『町を見下ろす丘』とやらも、そのうち聴くことになるでしょう。
その時はまた何か書きます。
ミカさんのブログ、いろいろと参考にさせていただきますね!
by: 幸大 | 2008/07/11 01:08 | URL [編集] | page top↑

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