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プライマルな夜に乾杯

プライマル
プライマル・スクリームである。
来月の16日に、06年作『ライオット・シティ・ブルース』以来の、
プライマル・スクリーム待望の新作が発表される。
その名も『ビューティフル・フューチャー(“ピーポー”ではない)』。
08年も早いものでもう約半分が過ぎ、
マーズ・ヴォルタ、マドンナ、コールドプレイ、ウィーザー、R.E.M.など
多くの大物たちが素晴らしい新作を発表し、
この先にもベックやオアシスなどの決して見逃せない重要作の発表が予定されている。
そんな中でもプライマル・スクリームの新作は特に注目度の高い作品である。
これだけの数のオリジナル・アルバムを発表してきた、
もはやUKロックの大御所的なビッグな存在感のバンドである。

だがしかし、恥ずかしい話だが、
実は僕は今まで彼らの音楽をあまりちゃんと聴いてこなかった。
90年代ロック史を語る時に必ず名前の挙がる『スクリーマデリカ』でさえ、
僕はまだ聴いたことがない。
なんだか面倒くさくて、比較的最近のアルバムしか聴いてこなかった。
でもやっぱり聴きたい。これはどうしても抑えられない。
そこで思い切ってオリジナル・アルバムを全部買い揃えて、
今夜はプライマル・スクリーム・マラソンでもやってしまいそうな勢いです。
もちろん右手にはビール。そして梅酒が待機中。
今夜は長くなりそう。

先ほどセカンド・アルバムの『プライマル・スクリーム』を一旦聴き終えて、
いたく感動したのでキーボードを叩いています。

プライマル・スクリームは、作品ごとに、
カメレオン的に自身のサウンドの色を変質させてきたバンドである。
それは時にブルージーなブルース・ロックの模範であり、
エレクトロニック・サウンドに求める鋭く尖った刺激であり、
その路線変更の柔軟さが彼らの大きな魅力であることは間違いない。
しかし、僕みたいなまずは「言葉」からロックを始めようとする者は、
そういうややこしいサウンド理論の細かいところは数回聴いただけでは
いまいちピンとこなくて、要はそういう部分には非常に鈍いのだ。
やはりロックは「言葉」である。
「言葉」を封じ込めたロックなんて、いったい何が面白いのか。
だから僕は、最高にカメレオンなプライマル・スクリームの作品を聴くことが、
これまでずっと億劫だったのだ。

でも、僕はもうひたすら頭を垂れるしかない。
プライマル・スクリームは最高の「音」のバンドであり、
また、最高の「言葉」のバンドであった。
僕は今さっき、それに気付いてしまったのだ。
いや、ロック・ファンとしては気付くのが恐ろしく遅いんですけどね。
本当に今更。お恥ずかしい。

セカンド・アルバムの『プライマル・スクリーム』には、
“ユア・ジャスト・トゥ・ダーク・トゥ・ケア”という曲が収録されている。
以下はその曲の歌詞からの抜粋。

「こんなにも堕ちてしまったら誰もおまえを救えない
こんなにも堕ちてしまったら誰もおまえを救えない
誰もおまえを救えない 誰もおまえを救えない
こんなにも堕ちてしまったら
おまえ以外には誰も
おまえ以外には誰も
自分自身でやらない限り
おまえを救うことはできないんだ」

これは、僕が最近ようやく、生まれて初めて実感した、ロックの夢と希望である。
何も変えられない、誰も動かすことのできない、
どうしようもなく無力な自分を救うことのできる唯一の存在としてある、自分。
そんな究極的な矛盾に身を沈めながら、
それでも全力で前に進むことを選び抜く勇気。
それが、ロックというものが示す唯一にして最大の夢と希望である。
CDを買ってその音楽を実際に聴いたものだけにしか与えられない、
決定的に普遍性に欠ける自己満足の押し売り。
つまりは、ロックという、嘘である。
もはや「信じている」のか「騙されている」のか、わからない。
ただ、その音楽を再生している間だけは、嘘でも夢と希望なのである。
全身全霊をささげて、騙されてやるのである。

現在のところ、このセカンドから6作目に当たる『エクスターミネーター』まで、
僕のプライマル・ディスコグラフィーはスッポリと抜け落ちている。
だからこの間の彼らの変化や動向は、僕はまだつかめていない状況にある。
だがしかし、8枚目の『ライオット・シティ・ブルース』で、
実に12年の時を経て、彼らが“ユア・ジャスト~”で歌ったロックの夢と希望は、
思わぬ形でひとつの実りとして鳴り響き、バンドは大躍進を見せている。
それを象徴しているのが、『ライオット~』の一曲目に収録された、
リード・シングルでもある名曲“カントリー・ガール”だ。
以下は“カントリー・ガール”から。

「カントリー・ガール 俺の手を取って
この病んだ土地から連れ出してくれ
俺は疲れて 弱って やつれ果ててる
盗みも働いたし 罪も犯した
ああ 俺の魂は汚れている
カントリー・ガール だけど持ちこたえて行かなきゃいけないんだ」

「持ちこたえて行かなくちゃ
ずっとめげずに
頑張り続けなくちゃ
ライオット・シティの憂鬱に
取り憑かれても」

ブルース・ロックの享楽的な部分だけを強調して歌い狂うこの曲で、
プライマルはロックの夢と希望、はたまた嘘を、祝福している。
開き直って楽観的に騒いでいるわけではない。
ただ、ひたすらロックであり続けるために。ロールするために。
それだけのために、ボビー・ギレスピーという男は、
ロックの夢と希望、そして嘘を、どうしようもなく信じている。
ローリング・ストーンズの系譜なんて素足で踏みつけて、
礼儀もマナーもビリビリに破り捨てて馬鹿騒ぎする男。
ロックのためなら毎秒アホになれる、世界のギレスピーである。
ロックなんて、所詮は薄っぺらい嘘っぱちである。
それでも、ここには中年オヤジになってもその嘘に全力で騙されている男がいる。

偉そうなこと語っても実生活ではそれを何ひとつ反映できないヘタレな僕も、
ただのアホでしかないのだろうか。
でも、僕は今、ものすごく嬉しい。
プライマル・スクリームに、猛烈にしびれている。
ロックンロールに感電している。
新作、めちゃくちゃ楽しみにしてやる。
これまでの作品、全部めちゃくちゃに聴き漁ってやる。
もう本当に、ロックはこれだから止められないのである。
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