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徹底検証 第6弾

 そういえば『徹底検証』なんてカテゴリーを作っていたことをすっかり忘れていた。前回ザ・スミスを紹介したのはちょうど一ヶ月ぐらい前。なんだ、まだ一ヶ月しか経っていないのか、と思う。それだけこの一ヶ月でいろんなことがあったということだろうか。確かに、この一ヶ月で僕の状況は激変した。いや、「激変した」なんて言い方じゃ僕はダメかもしれない。「激変させた」のだ。去年の夏から付き合ってきた彼女と別れました。突然に個人的なことですんません。複雑に入り組んだ気持ちにどうにかこうにかケリをつけたくて、とことん内に向かって、ここ数日は変なことばかり書いていたと思う。でも、今回の『徹底検証』にこのバンドを選んでしまう時点で、僕はまだ完璧にケリをつけることができていないんだろうな。本当は、ニルヴァーナにしようと思っていた。でも書き始めようとして気分が変わった。つい先日、待望の新作が発表されたことは関係ない。その子が大好きなバンド、ウィーザーである。
 ウィーザー。急速に流れる時代の波とも、音楽的な技術革新とも無関係の場所で、ただひたすら「個人的な感情」を糧にして、モチベーションにして、長年のキャリアを築いてきたバンドである。でもだからこそ、彼らのファンもまた時代の波とも技術革新とも無関係の場所で、「個人的な感情」を理由に彼らを愛し続けてきたはずだ。今日の僕の全オリジナル・アルバム・レヴューでも、作品ごとの熱の落差がすごいと思う。それがそのまま彼らの作品に対する僕の「個人的な感情」の密度と温度の差である。今回の『徹底検証』はそもそもが「個人的な感情」から始まったものである。自由にやろうと思う。あなたにも、「個人的な感情」のみを理由にして聴ける音楽と一度向き合ってみて欲しいと思う。
 『徹底検証』です。


・1st album
Weezer (The Blue Album)
Weezer/Weezer


“オンリー・イン・ドリームス”を聴いて欲しい
 僕がこのアルバムについて言いたいこと・言わなきゃいけないことはそれだけで、だから後のことは実はどうでもいい。本作の最終曲として収録されたこの曲には、僕がウィーザーを聴き続ける理由がギュウギュウに詰まっている。多くのファースト&セカンド支持者の人たちも、それぞれに諸色意見はあるだろうけど結局は僕と似たような感じじゃないだろうか。この曲を「女々しい」とか「ダメダメ」とか「情けない」とかいう理由で聴かない男子がいたとしたら、そんなアホなやつはみんな死んでしまえばいいと本気で思う。俺がぶち殺してやる。気が狂いそうになるくらい大好きで大好きでたまらない「あの子」のことを夜な夜な飽きもせず考えて、独りぼっちのベッドの上で「女々し」くて「ダメダメ」で「情けない」姿になれない男子は、ダメである。強いコンプレックスと自意識にさいなまれて言いたいことも言えずに苦悩する男子の実態を暴いた本作収録曲の中で、例外的にこの曲は「夢の中だけ」という名目の下に一切の迷いなく感情を爆発させている。僕は今でもこの曲を聴くと自分の夜の姿が覗き見されているみたいでなんだか恥ずかしくなってしまうのだけど、君はどうだろうか。でもだからこそ、女の子にはこんな男子を好きになって欲しいよね。女子諸君、そこんとこ、ほんと、よろしくお願いしますよ。


・2nd album
Pinkerton
ピンカートン


世界で最も高濃度なエモ
 ロックは基本的に「型」のない音楽である。どこからでも始められるという意味で、本当に自由な音楽である。だからこそ、ロックには作り手の人格や性格、経験や生き様が色濃く反映されやすい。それを最もピュアな形で封じ込めたのが「エモ」と呼ばれる表現である。「日記的」とよく形容されるリヴァースの赤裸々な告白で埋め尽くされたセカンド・アルバム。“タイアード・オブ・セックス”、“ノー・アザー・ワン”、“アクロス・ザ・シー”、“ザ・グッド・ライフ”、“ピンク・トライアングル”など挙げ始めたらキリがないが、本作でリヴァースは数々の大泣きメロディにのせて自分がダメダメな理由をひとつひとつ明かしていく。ハッキリ言って、名曲しか入っていない。優れてコンセプチュアルでありドラマチックなこの傑作が、どうしてアメリカで大コケしたのかまったく理解できない。アメリカ人はアホである。この心の内側を針でチクチクとされるような痛みと悲しみと切なさが連中にはわからないのだろうか。女の子のことばかり考えては絶望しているリヴァースのどうしようもない姿は、真っ当な日本のファンからは今も変わらず愛され続けている。エモがこんな作品ばかりだったらいいのに。それくらい、ドロッドロでねばっこいエモーションに溺れそうになる。


・3rd album
Weezer (The Green Album)
Weezer (Green Album)


余りにも悲しすぎる成功
 毀誉褒貶の相半ばする作品である。前作『ピンカートン』がアメリカで大失敗したことを受けて、リヴァースはここからガラリと作風を変えてしまう。音は抜けが良くなった。爽やかになった。“アイランド・イン・ザ・サン”なんて、めちゃめちゃスタイリッシュでかっこいい。実際、本作は売れた。でも、それを素直に喜べないのがファースト&セカンド支持者の悲しすぎる性である。初期はギターの音ひとつとってもザラザラしていて、荒っぽかった。でも、その「イビツさ」が感動的だったのだ。自分の感情とリヴァースの感情が擦れあって起こる激しい摩擦。その痛々しい摩擦に、僕たちは狂おしいほどの切なさを感じていた。グッド・メロディは健在だ。でも、抑えようとしても腹の底から這い上がってくるような、どうしようもなくナチュラルなきらめきが、本作にはない。本作を聴く時、僕はわざと「共感」を捨て去って耳を傾けないといけなくて、とてもつらい。最新作を聴いた今、ウィーザーがアルバムをセルフ・タイトルにするのはバンドが重要な分岐点に立たされている時だという考えに確信が持てたのだが、最新作やデビュー・アルバムと同じく本作もバンドの名前を背負っている。新しいウィーザー誕生を祝福しているのだろうか。苦い過去は切り捨てるという意味だろうか。せめて、後者であることを願う。


・4th album
Maladroit
Maladroit


もう聴く気にすらなれない
 初めて聴いたウィーザーのアルバムがこれ。僕はそういう世代です。でも、一番ちゃんと聴いてこなかったアルバムでもある。僕にとってはどうでもいい作品である。だからといってそれだけで終わらせるわけにもいかないので、何を書けばいいものかと困っています。これはただの偶然だが、最新作の収録曲“ハート・ソングス”の中でリヴァースが自分の音楽体験を告白していて、ご存知の通りビートルズとメタル系バンドを同列で愛していた彼らしく、ジョン・レノンはもちろんアイアン・メイデンやジューダス・プリーストやスレイヤーの名前も歌詞に並んでいる。本作はそんな彼のメタル趣味が露骨に表れたアルバムとなった。骨太な轟音リフと痛快なポップ・センスで駆け抜ける一枚。でも、いくら意匠をこらしても趣味は趣味である。別にウィーザーにやって欲しいアルバムではないという意味で、本当にどうでもいい作品。『ピンカートン』以来のセルフ・プロデュースで好き勝手やってガス抜きになったのならそれでいい。なんせ次作は『メイク・ビリーヴ』である。傑作である。ただ、メタル色の濃い本作の日本盤にボーナス・トラックで“アイランド・イン・ザ・サン”の入っている意味がわからない。大人の世界では誰も何も疑問に思ったりはしないのだろうか。どこまでも散漫なアルバムである。


・5th album
Make Believe
Make Believe



前向きに回帰
 申し訳ない感じがなくなってきた。アルバムの内容そのものもだが、聴く側の態度としてもそうである。リヴァースは、もう開かれることに戸惑いを感じていない。バンドのそのリラックスしたムードが作品のキレの良いポップさや自由さにうまくつながっている。ウィーザーは、時代の必然性や最新テクノロジーといった自身のロックを更新する手っ取り早い常套法を一切用いないで前に進み続けてきたバンドである。だからこそ彼らの音楽の核心部分は外の世界ではなくリヴァース・クオモというひとりの男の心の内にこそある。本作では彼自身がそこの部分に非常に意識的になっている。だから、“ホールド・オン”も“ピース”も、彼には書くことが出来た。このアルバムのポップさはいったい何なのだろうとずっと考えてきた。初期よりも『グリーン~』『マラドロワ』に限り無く近い種類のポップさだが、なぜだか「後ろめたさ」がないのだ。その答えを次のアルバムで明確に示す義務がリヴァースにはある、と強く思っていたのだが、『レッド・アルバム』はそれに十分すぎる快作だった。要は、リヴァースが今の自分を突き詰めて、掘り下げて、それを披瀝することに躊躇していないということに尽きる。初期作があんなにも自分のダメダメぶりを暴露しながらも素晴らしかったのは、それでもリヴァース自身が前向きだったからだ。そういうことである。


・6th album
Weezer (The Red Album)
ザ・レッド・アルバム


愛嬌溢れる(=センスない?)ジャケットは相変わらず
 正真正銘の原点回帰、とは少し違う。とはいえファースト&セカンド支持者も『グリーン~』以降のファンも、みんなを唸らせることのできる快作であることは間違いない。もちろん00年代に入ってからの作品ではこれが一番好きだ。かつては溢れ出る自己嫌悪で呼吸困難になっていた男が「史上最強の男」と歌うのだから、ここにある決意のほどは凄まじいものなのだろう。実に三度目のセルフ・タイトル。今度は、新生ウィーザーの誕生を僕の方から祝福したいと思う。リヴァースはもう自分が自分であることに躊躇したりはしない。その意識は間違いなく本作の更なる自由度の高さに影響しているし、だからこそリード・シングルの“ポーク・アンド・ビーンズ”で「僕は自分のやりたいことをやるんだ」と堂々宣言することができたし、他のメンバーの曲も、すべてがこのアルバムをポジティヴな方向へ導いている。リヴァースは昨年の冬に主にウィーザー初期の未発表曲やデモを寄せ集めたソロ・アルバムを発表している。ファンからの勝手な勘違いかもしれないが、過去の自分は一旦きちんと整理して、更なる一歩を踏み出すプロセスの一部のようなアルバムだと思っていた。このアルバムを聴くと、決して間違った推測ではなかったような気がする。これまでの自分を引き受けながらも、新たな息吹きを感じさせる素晴らしいアルバム。
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