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この映画を観ろ

 この映画を観ろ。ズバリ、この映画を観ろ、である。そのまま受け取っていただければ良い。これを書く理由は、ただ単にこの9つの作品をできるだけ多くの人に観てもらいたいという願いである。それ以上でも、それ以下でもない。改めて見ても素晴らしい作品群である。最初は10作品選ぼうと思ったが、自分のDVDコレクションを前にウンウン唸りながら考えて、結果的に同列で語れる作品は9つしかなかった。一切の妥協無しに選んだ9作品である。アクションもミュージカルも感動ドラマもアニメもある。選んだ基準は個人的な思い入れだけだが、どれも極めて普遍的な魅力を持っている作品だ。是非とも一度観て欲しい。すでにあなたが観たことのある作品も、いくつかあるのではないだろうか。もし観ていない作品がひとつでもあれば、今すぐにでも観て欲しい。だから、前置きはこれぐらいにしてさっそく紹介します。相変わらず字は多いです。


No.1
A Chorus Line
コーラスライン


僕の、この一作
 やはりミュージカル映画はこうでなくてはならない。同じミュージカルものでも高次元な表現力を誇る『ダンサー・イン・ザ・ダーク』から過去の有名曲の数々をミュージカル風にアレンジしてその価値を再発掘した『ムーラン・ルージュ』など様々だが、ミュージカル映画は最終的には歌と踊りの存在感そのものが物を言うのである。歌と踊りを除けば、どうでも良いセリフが並べられた退屈な映画だ。そして、歌と踊りを観せるだけで人を感動させられる映画である。ふと音楽が流れてきた瞬間、歌と踊りが頭の中で鮮やかに再現される、本当に素晴らしい映画である。ダンサーの中にはブロードウェイの舞台版でも本作に出演経験のある者もいる。全てを懸けて歌と踊りを謳歌するダンサーたちの姿は、何度観ても観飽きないし、とてもとても感動的だ。さっきから具体的なことを何ひとつ言っていないが、説得力がないことを承知でこのまま書かせていただく。この映画ほど素晴らしいラスト・シーンを僕は未だかつて観たことがない。金ピカの衣装に身を包んだ総勢100名以上のダンサーで歌い踊るラスト・ナンバー、“ワン”。眩暈が起きそうなくらいの過剰な金ピカで埋め尽くされたステージというあの空間には、映画がその誕生から常に果たそうとしてきた「夢」が、確かにある。


No.2
Big Fish
ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション


ガラクタの奇跡
 今更説明する必要もないと思うのだけど、フレーミング・リップスというバンドがいる。機械でパパッと済ませれば良いのにあえて人力で音を探ったり、音程を外しまくった歌声をそのまま採用したり、その美学はとにかく機能的なものではない。でも、自分たちのそんな役に立たない「うまくなさ」を大真面目に認めながら「君は自分のありったけのパワーでいったい何をする?」と問いかける彼らが、僕は好きだ。そして、ティム・バートンという男は、映画界のフレーミング・リップスである。彼の作る作品はどれも切なくなるほどに妄想的で、所詮は実生活では何の役にも立たないフィクションに過ぎない。この作品だって、つまるところは一人の男の作り話である。僕たちの背丈の二倍以上はある大男だって、体がくっついた双子の歌手だって、オオカミに変身するサーカスの団長だって、人の死に様が瞳に映る魔女だって、そして湖を泳ぎ回る大きな魚だって、全て嘘っぱちである。嘘っぱちで、何の役にも立たないガラクタである。それをくだらないと言って投げ捨てるか、何の役にも立たないガラクタだけどとりあえず立ち止まって拾ってみるか、それはあなた次第だ。でもどうせなら、ポケットに大事にしまっておくほうが、僕は素敵だと思うぞ。その感触は、きっと温かいはずだ。


No.3
Kill Bill Vol.1
キル・ビル Vol.1 (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第2弾)

ヤッチマッター!
 オタク気質の映画監督なら、誰だって一度はこういう究極の趣味世界を映し出した作品を作ってみたいと思うのではないだろうか。宮崎駿も『紅の豚』を作った。ただ、こうゆう映画は余りにも個人的な趣味性が爆発しすぎてしまい、独りよがりなマニアックさだけが目に付く惨めな作品に成りかねない。タランティーノ監督は、あえてそれに全力で固執することで趣味映画にありがちな陥穽にはまることなく、完全に突き抜けた。そもそもこの人の作品には独自の趣味性が至る所に散りばめられているが、本作は別格である。この作品を観るだけで、僕たちはタランティーノの映画に懸けるガチャガチャとした思い入れの全てを瞬時に理解することが出来る。この作品が僕たちの中の「アクション」というカテゴリーをいとも簡単に振り切っているのは、明らかにエグすぎる大量の血しぶきとイタすぎるアニメーションとツラすぎるジャパンの誤解によるものだ。そして、それこそがこの作品を何よりもエッセンシャルなものにしている。作品を観ていると、監督の顔どころか脳みその中身まで見えてくるような気がするのだ。キャスティング、音楽、カメラ・ワーク、色使い……何を取っても「最高!」の一言。はちゃめちゃカオスなのに、みんなとっても生き生きとしている。これぞ趣味世界の真髄。


No.4
Trainspotting
トレインスポッティング DTSスペシャル・エディション 〈初回限定生産〉


ロックすること、生きること
 いくつかの作品を観たが、ダニー・ボイルという監督は「ロックであること」に対してとても意識的な人だ。「セックス、ドラッグ、ロックンロール」を地でいく男である。それは、ふとしたセリフに出てくるロック・グレイツの名前や、フィーチャーされた楽曲のことを考えるだけで簡単に想像できる。本作にもイギー・ポップのポスターがさりげなく飾ってあったりするので探してみて欲しい。そして、本作は彼とユアン・マクレガーが初めてタッグを組んだ『シャロウ・グレイヴ』や、続く『普通じゃない』と同じスタッフで作られた、ダニー・ボイル流の最高にクールでロックな世界観がひとつの完成形を迎えた作品だ。セックス、ドラッグ、アルコール、クラブ、暴力の中心に身を沈めた90年代半ばのスコットランドの若者の文化圏を描いているが、その生活はどう考えても満たされていない。自堕落な生活に影を落とす倦怠や虚無は、しかし、決して当時の若者だけが共有していた特別なものではない。いったい何のために生きているのかわからないまま、でも僕たちは何か始めなきゃいけない。「未来を選べ、人生を選べ」という映画史に残る名ゼリフが、この作品を鬱屈した青春時代のドキュメントとしてリアルなものにしている。この作品を観て少しでも共感できる部分があるのなら、きっと、人生とはこういうことなんだろう。


No.5
Little Miss Sunshine
リトル・ミス・サンシャイン


「あなた」を認める映画
 映画が客席とスクリーンを設置した映画館という基本的な発表のスタイルをとっている限り、つまり、一人二人単位ではなく大勢の人たちを一度に相手にしている表現である限り、映画に必要とされる究極の要素は「普遍」ということになる。それは「流行りの~」とか「泣ける~」とか、決してそういうことではない。僕が思う「普遍」とは、観ている全ての人がストーリーの中に自分の居場所を見つけることが出来る、ということである。そして、僕にそれさせてくれた初めての映画が『リトル・ミス・サンシャイン』だ。この作品を観て感動的なものを何も覚えない人は、自信過剰のバカか映画を観るセンスのない人だと思う。登場するキャラクターはそれぞれに自分だけの論理を持っている。社会の勝ち組になることに固執するお父さん然り、ニーチェに心を奪われて以来一言もしゃべらないお兄ちゃん然りである。そして、その論理はどれも一言に「正当」とは認めがたいものばかりだ。僕たちだって一緒である。誰一人「生きる」ということに違和感を抱えずにいる人間などいない。器用に社会に順応できないダメな自分をどうにか救うために、僕たちは自分だけのやり方を持っている。この作品には恋愛のようなわかりやすい感傷はない。ただ、映画を観ている全ての「あなた」に居場所与えることで、グッと「普遍」に近づいたのだ。


No.6
Butterfly Effect
バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション


現実をも凌駕するエンターテインメントの説得力
 映画をとりあえずエンターテインメントとして捉えるなら、この作品は間違いなく最高峰に位置する。本作の成功の影響が明らかに感じられた第二弾は二番煎じという印象をどうしても拭えなくて、確かにまっさらな気持ちで観たらそれなりによく出来た作品なのだろうけど、やっぱりこっちのインパクトが大きすぎる。とにかく徹底されている。無造作に配置された情報が結末に向かうにつれてひとつずつリンクしていくストーリー展開には目を離すことができない。タイトルの「バタフライ・エフェクト」とは「蝶が羽ばたくだけで対岸の国で竜巻が起こる」というカオス理論のことだが、主人公の青年は次々と発生する「エフェクト」で不幸になっていく人々に直面しながら、最も切ない「正解」に迫られる。紆余曲折を経て主人公が何とかその答えに辿り着いた時、オアシスの“ストップ・クライング・ユア・ハート・アウト”が流れてくるのだ。そして、リアムの歌う「終わってしまった過去を変えることはできない」という言葉が響いた途端、本作の「運命は変えられない」という月並みなメッセージは観ている者に強烈な余韻を残す。それは、結局はエンターテインメントでしかない本作に「この映画は実話に基づいて~」という煽り以上の鮮やかな説得力を持たせている。本当によく出来てる。


No.7
Eyes Wide Shut
アイズ ワイド シャット


だからこそ「目を閉じる」のだ
 駄作を残していない監督、という点においては、スタンリー・キューブリックは間違いなくトップ・クラス。だから『時計仕掛けのオレンジ』も『フル・メタル・ジャケット』も本当に捨てがたいのだけれど、僕が選ぶのは彼の作品にしては珍しくトム・クルーズにニコール・キッドマンという超ゴージャスかつ超大衆的なキャストが話題になった本作。性的な精神世界だとか夫婦愛だとか、名作と呼ばれながらもあちこちでとんでもない勘違いがされているようだが、本作が描いているのは「ファックの可能性」について、である。すなわち、ファックは、刹那的な享楽にも、愛する人への裏切りにも、禁じ手のビジネスにも、そして時には「死」にすら成り得る。もちろん、キッドマンが最後で言い放つセリフからも読み取れるように、究極的な愛の証明でもある。ただ、このラスト・シーンが強烈なのは、ファックを楽観的なイメージで健全にまとめてしまうところではなくて、キッドマンが最後のセリフを放った直後に、突如としてエンディングに切り替わるところにある。観ている者にセリフを乱暴に突きつけて、そして終わる。この衝撃がわかっていただけるだろうか。全編に亘って描かれたあらゆるファックの可能性は、それがどんなに卑しいものであっても、絶望的なものであっても、結局は僕たちの目の前に横たわっているものでしかないのだ。


No.8
Dancer In The Dark
ダンサー・イン・ザ・ダーク


見ろ、「新しい世界」を
 ひとつの映画作品がその説得力を最も発揮できるところはエンディングに他ならない。僕のこの映画感想文の多くがエンディングを中心とする理解で書かれているのは、そういうことである。そして、この作品のエンディングは、僕の中の「映画」を変えた。四面楚歌の絶望に追い込まれて全てを失うひとりの女性の最後を記録した本作のエンディング。ビョーク演じるセルマは、お金や視力だけでなく、命までも失った。果たして、この映画はそれで本当に「終わった」のだろうか。この映画を観た友だちはみんな口を合わせたみたいに「暗い」としか言ってくれなくて困るのだけど、その観方ではまだまだ中途半端だ。この作品は、セルマが死を迎え、ビョークが歌うエンディング曲の“ニュー・ワールド”が流れ始めて、そこから「始まる」のだ。あらゆる悲しみと絶望を経験し、それでもセルマが生き生きと歌っていたのは、全てを感じ終えた後にこそ始まる何かを信じる喜びを、彼女は決して忘れなかったからだ。もっと、エンディング直前にスクリーンの真ん中に浮かび上がってくる言葉の意味や、“ニュー・ワールド”の歌詞に注目して欲しい。ありったけの絶望の向こう側にあるはずの、わずかに残された何かに思いを馳せる希望。本作のエンディングは、極めて高度な表現力でその希望の中身を伝えているのだ。


No.9
もののけ姫
もののけ姫【劇場版】


「人間」であることを忘れるな
 「この映画を観ろ」と言いつつこれを観ていない日本人は絶対に多くないと思うのだが、最後はこれである。頭の固い評論家たちは「アシタカは現代社会における○○を象徴していて~」とか得意げに言っているが、そんなこと、本当はどうでも良いのである。宮崎駿の作品に共通するテーマは、初期作の『ナウシカ』や『ラピュタ』を例に挙げるまでもなく、「人間性の否定」だと思っている。人間という世界の闇の諸悪の根源を否定することこそが、宮崎駿にとってのアニミズムだと考えている。だからこそ彼の作品には非・人間的なキャラクターが多く登場するのだ。そして、本作ほど宮崎駿のそんな世界の捉え方が対自然という明確な構図で表れている作品はない。ただ肝心なのは、宮崎駿の「人間性の否定」は、そのまま彼の「人間臭さ」でもあるということだ。否定することで人間の本性を対象化させながら、彼はそれを捨てることができなかった。自分たちの利益だけを考えて高慢に自然を犯すのが人間であるのと同時に、そんな愚かな人間に警告を発するのもまたアシタカやサンといった人間以外の何物でもないのだ。人間性をどれだけ否定しても、結局は自分ですらそんな人間の片割れでしかないのである。宮崎駿の作品は常にその事実と向き合う意味を言外に含んでいる。そんな矛盾に身を浸しながらの「生きろ」というメッセージほど、啓発として真に迫っているものはなかった。
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コメント

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ちょくちょく遊びに来ます。継続してアップ凄いです。僕も努力しないと・・・。ここのところ寒いので体に気をつけて下さい。また拝見させて頂きます。
by: あきお | 2008/11/12 16:55 | URL [編集] | page top↑
# あきおさんへ
初めまして!
嬉しいコメントありがとうございます。
ただ引き篭もってるだけです笑
大学生になってからというもの明らかに免疫力が低下しているので、
寒さには気をつけたいと思います。
これからもよろしくお願いしますね!
by: 幸大 | 2008/11/13 13:34 | URL [編集] | page top↑

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