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安室奈美恵はなぜすごいのか

60s 70s 80s
/ 安室奈美恵

60s 70s 80s(DVD付)



時代が求めた「再構築」
 Vidal Sassoonとタッグを組んで、「60年代」「70年代」「80年代」をテーマにいったん既存のスタイルを解体し、現代的な強度とスタイルを引き出しながらヘア&ファッション&ミュージックの新たな在り方を提案した画期的なシングル。僕はヘアメイクやファッションのことは無知といって良いほど何も知らないので、それぞれの世代感を示す3つの楽曲のビデオが収録されたDVDを観て安室奈美恵の余りに美しい姿にただただうっとりすることしかできないのだけど、ロック・オタクの視点からひとつだけ言えることがある。それは、「シングル」CDという音楽の基本的な発表スタイルの概念の「再構築」である。
 ひとつのアーティストが何枚もわけのわからんベスト・アルバムを発表し、インターネットで楽曲が切り売りされている時代である。要は、聴きたい曲はどこからでも簡単に安く手に入れることができる。薄っぺらい長方形のケースに収められた8mmサイズのシングルCDが発表されるのを一日千秋の思いで待ち続けていた時代とはわけが違う。残酷な言い方をしてしまえば、もうシングルCDなんて誰も必要としていないのだ。先日、YUKIの新しいシングルを買った時に、友達に「今どきシングル買ってる人なんているんや~」と言われて改めて実感したのだが、シングルCDはもはやコレクターズ・アイテムの領域である。この時代にシングルで勝負しようとするなら、今までと同じことをやっているだけではいけない。申し訳程度にDVDをつけるだけでもまだまだ甘い。安室奈美恵が本作でやった試みとは、昔とはすっかり事情の変わってしまった現代音楽の価値観に対する「再構築」という最もラディカルな挑戦である。
 まず驚いたのは収納ケースの大袈裟さだ。内容はブックレットにCDとDVDだけで、特別なものは一切ない。それでも通常アルバムよりもワン・ランク上のケース・クオリティ。セクシーなジャケットと相俟って、ひと目見ただけで高級感がある。更に、本作に収録されてるのは、どれも単体シングルで確実に通用する圧倒的な楽曲が3曲も。CMでも煽られていたように、VSのクリエイティヴ・エキスパートとファッション界のトップスタイリストが安室奈美恵の両脇を固める一大プロジェクトである。どこをとっても超破格。念のためにもう一度言っておくが、これは安室奈美恵の新しいアルバムではなく、あくまで「シングル」CDである。安室奈美恵が提案した、今という時代性と真正面から向き合った新しい「シングル」の形である。昨年の傑作アルバム『PLAY』の時にも思ったのだが、かつては典型的なJ-POP街道を邁進していた安室奈美恵は、いつの間にか時代の「先鋭」にまで自分の立ち居地を高めてしまった。確かにセールス面では90年代に劣る。でも、本人の証言無しに失礼かもしれないが、彼女は今キャリア史上最も幸せな場所にいる。もっとみんな正当な評価をするべきである。
 最高の商品クオリティ、最高の内容、最高のスタッフ、そして「安室奈美恵」という最高のネームバリューが一度に出揃ったとなれば、完全に時代遅れの「シングル」CDと言えども話は変わってくる。これはただの余談だが、安室奈美恵は本作で小室プロデュース期の“I HAVE NEVER SEEN”から実に9年4ヶ月ぶりにオリコン1位を獲得した。
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