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YUKI

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すべては、『PRISMIC』を終わらせるために

 ここ最近のYUKIについて語る前に、僕たちは彼女のキャリアを非常にややこしいものにしている『PRISMIC』という表現をどうにかしなければならない。これをひとまず片付けないことには、僕たちは一歩も先へは進めないのだ。端的に言うなら、『PRISMIC』とはYUKIの喜びも甘えも嘆きも絶望も全部受け入れて、バンドを解散して居場所のなくなった彼女の世界の終わりまでも受け入れて、もう一度YUKIをこの地面に甦らせようとするアルバムだった。それはもう完全に「表現しきった」作品であって、とにかくロックンロールな一枚だった。これまで“スタンドアップ!シスター”や“長い夢”など一曲単位ではそれ以上の「何か」を光らせるものも確かにあったが、アルバム単位となるとYUKIは未だに『PRISMIC』以上の表現を完成させてはいない、というのが動かしがたい事実だ。

 『commune』を端緒にして『joy』『WAVE』と、YUKIの音楽は『PRISMIC』の内に向かう力から離れて急カーブを描き始めた。それは、新たに手に入れた、空、太陽、月、雨など森羅万象を味方につけるポジティビティで『PRISMIC』を超えるための、決死の覚悟だったんだと思う。静かに波打つ情動をアコースティックに表現した“commune”、今のYUKIの入り口を開いた“joy”の二作は、『PRISMIC』で一旦崩壊した彼女の世界をもう一度組み立てるピースとして、とても良いアルバムだったと思う。ただ、そこから更にポップネスに磨きをかけようとした『WAVE』は、そればっかりが頭でっかちになってしまって本質的な進歩を示すことができなかった。ちょっと簡単すぎるけど、『PRISMIC』を軸にザッと振り返ってみたらこんな感じだと思う。

 そして07年。配信限定で発表された“ビスケット”、シングル・コレクション『five-star』の発表、それに伴うライブ・ツアー、他にもシングル“星屑サンセット”に最新曲の“ワンダーライン”の発表など、今年一年YUKIは動きまくった。そして、今年発表された三つの新曲は、文句なしに過去最高レベルに到達しつつある。『joy』以降の少女性出しまくりで半ば開き直っちゃった感のあった『WAVE』からたった一年で、普通ここまで持ってこれるか!?これはもうポップとかコマーシャルだとか、そんなレベルの話ではないのだ。ここにはなんというか、古いものが消え去って、新しいものがムクムクと頭をもたげるような、そんな何かが刷新される時のような抑えきれない喜びがある。自分の両足を支えている大地の奥のほうから突きあがってくる凄まじい高揚がある。これは多分、『PRISMIC』以降のYUKIの表現が初めて新たな地平に届きつつあるということなんだろう。ここまで根を張り続けてきた『PRISMIC』が終わって、ここからまた何かが始まるんだろう。蔦谷好位置、mugen、野間康介……こんなにも多くのクリエイティヴたちが、七色のぶっとい線の向こう側に、新たなYUKIの世界を築き上げようとしているのだ。いつになるかわからないが、次のアルバムでは何を見せてくれる?『PRISMIC』を、超えていけ。
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