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アメリカン・イディオット

07年を振り返るために、最近は今年発表された作品を集中的に聴いています。
邦楽は1年を俯瞰できるほど聴いていないので、ひたすら洋楽です。
これは特にアメリカのロック・シーンから見えてくることだけど、
今年は「警告の年」だったんだと思う。

9.11以降、アメリカのロックは大きく変わった。
というか、ロックという常に神経を鋭くさせて
敏感に物事を感じなければならない表現をする者たちの、
アメリカに対する意識そのものが変わった。
超大国アメリカ。自由の国アメリカ。
でも、本当にそうか?
俺たちはこの国を信用して良いのか?
そんな、自分たちのアイデンティティの根底の部分に芽吹いた猜疑心。
9.11以降のロックは、それをどうにかするための行為だった。
それがそのまま21世紀というロックの価値観だった。

9.11とは、世界の特等席にのさばっていたアメリカの化けの皮を引っぺがして、
その下にあるドロドロとした赤黒いマグマを露出させる行為だったんだと思う。
そして、それを世界にさらす事を恐れた時、アメリカは妄想大国になった。
妄想に取り付かれたアメリカは自国の若者が戦地で命を落とすことにも、
罪のないイラクの人々たちの命を奪うことにも、まったく躊躇しなかった。
妄想と強迫観念に取り付かれたアメリカは、
「見えない敵」にガタガタ震える臆病者でしかなかった。
タチが悪かったのは、その臆病者が世界最高の軍事力を持っていたこと。
下降するアメリカ。
そして07年、それをどうにかするためのロックはひとつの高みを迎えた。

今年発表されたブライト・アイズの最新作は全米4位を獲得した。
モデスト・マウスなんて、なんと1位である。
僕はいつもは作品の評価と売上はあんまりリンクさせない主義だけど、
これまで局地的な盛り上がりしか見せなかったこの二組の大躍進は、
ものすごく象徴的な出来事だった。
共に音楽性はポップとしての機能をきちんと保ちながらも、
言葉の比重が圧倒的に高いため、
理解するのにそれなりの思考を聴き手に求めるタイプのバンドだ。
そんなある意味めんどうなこの二組が
アメリカの終わり、世界の終わりを歌った作品が、全米レベルで評価され始めた。
それは紛れもなくアメリカ国民の意識の変化と直結している。
ホワイト・ストライプスが揺らぎ始めた自分の足元を見つめなおすためにも、
自分のルーツを探り、「結局みんながよそ者なんだ」と叫んだのも、
根底にはまったく同じ意識がある。


もうひとつは、ロックに対する警告。音楽に対する警告だ。
データ配信の形式がもう完全に一般に浸透して、
でもそれにともなって違法ダウンロードは増える一方。
サービス向上はほったらかしで規制にばっかり目を向けるレーベル。
インターネットという新たな可能性のもとでどんどんちいさくなっていく音楽業界。

ナイン・インチ・ネイルズは今年『イヤー・ゼロ』を発表する前、
楽曲データの入ったUSBをライブ会場にわざと置き去りにしたり、
グッズに謎の暗号を残したり、
作品が耳に届く以前から聴き手とのコミュニケーションを図ろうとした。
それは退屈な音楽シーンに対する危機感以外の何物でもなかった。

そして、最も象徴的だったのが、レディオヘッドの『イン・レインボウズ』だ。
聴き手が作品の価格を自由に決められるこの作品。
“It's up to you(あなた次第)”というこの言葉に隠された
「これぐらいエキサイティングできることやってみろ」という
現在の音楽業界への挑発。
世界は間違いなくレディオヘッドに興奮した。


世界が行き詰った時、ロックには何ができるか。
07年はその答えを求めた1年だった。
そして、ロックは何かを手にしたはずだ。
それを考えながら、07年ベスト・ディスクを選んでいます。
バイトに行かなきゃいけないので、今日はこの辺で。
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15:53 | 音楽 | comments (2) | trackbacks (0) | page top↑
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コメント

#
非常に興味深く見させていただきました。きちんと作品を意味づけして聴かれているのだなぁと感心してしまいます。でも大事ですね、自分もがんばらなくては。

こっちからはリンク貼っときました。よろしければ、そちらもお願いしますね~。
by: fafnir | 2007/12/09 04:24 | URL [編集] | page top↑
#
ありがとうございます!恐縮です。
ビョークやアーケイド・ファイアのやったことも、まったく同じ「警告」に当てはまると思います。
そんな1年だったと思います。

僕の方もリンクに加えさせていただきました!
これからよろしくお願いします!
by: 幸大→fafnirさん | 2007/12/09 12:33 | URL [編集] | page top↑

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