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New World

音楽でいう僕にとっての「これ!」という作品。
YUKIの『PRISMIC』、オアシスの『Don't Believe The Truth』、
カーシブの『The Ugly Organ』など、他にも少し挙げられます。
ちょっと前に『PRISMIC』は「私のこの1枚」として紹介したぐらいなので
無理やり1枚に限定することは無理ではありませんが、
どれも出会えたことを誇れる絶対的な作品です。

本だったら、貫井徳郎の『慟哭』、
横山秀夫の『半落ち』、重松清の『きよしこ』、
野沢尚の『破線のマリス』『砦なき者』などが挙げられます。
ベクトルが全然違うので、こればっかりはひとつに選べません。
漱石も芥川も経験していないような僕ですが、
それでもこの5作は部屋に飾っているぐらい大好きな作品です。

今日は映画でいう僕にとっての「これ!」という作品を紹介します。
映画館に行くことなんて年に2回もあれば多い方で、
これまでに観た作品の数はビックリするぐらい少ないんですが、
今日紹介する作品はそんな惨めな映画体験の中で
凄まじい衝撃を受けた作品です。
学び舎の中で観てる率がものすごく高いこの作品。
映画のレビューなんて書いたことありませんが、一生懸命紹介します。
本と映画はどこまで内容に触れて良いのかが難しいですね。

Dancer In The Dark
ダンサー・イン・ザ・ダーク



 00年に公開されたラース・フォン・トリアー監督の問題作。カンヌ国際映画祭では見事に「パルムドール賞・最高賞」に輝き、主演の我らがビョークも「主演女優賞」を獲得。『グリーン・マイル』で有名なデビッド・モースなども出演している。そんな本作出演陣の演技が素晴らしいのは言うまでもない。音楽なんてビョーク本人を中心に構成されたのだから、そこにはもう巌のように揺るぎない信頼を置いてしまってかまわない。この作品が問題なのは、その内容である。何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、こう言わなければ気がすまないほどこの作品の内容は本当に凄まじい。
 失明寸前ながらも息子の手術代のために毎日工場に働きに出るセルマ。この作品は、息子の誕生日にプレゼントすら買ってやる余裕のない極限まで切り詰めた生活を送る彼女の、地獄の底を見るような悲劇の物語だ。もしかしたら、この作品のサディスティックな一面ばかりが目について、アレルギー反応が出てしまいそうになるほどの強烈な刺激を感じる人がいるかもしれない。それほどまでに、この作品は徹底的にセルマを絶望でがんじがらめにしてしまう。どちらに転んでも絶望というタイトロープに彼女を無理やり立たせ、背中を押して奈落の底へ突き落とす。だが、美意識に反する人もいるかもしれないが、それでもこの作品の絶望は美しい。もうちょっと正確に言うなら、この作品の「絶望の先」は美しい。
 ミュージカルは不思議だ。どうして突然歌ったり踊ったりする?僕はしないよ、そんなこと――セルマに想いを寄せる男性ジェフの、この台詞が作品中で最も印象的だ。屁理屈だ、と言い捨ててしまえばそれまでだが、この言葉にはミュージカルの全てが集約されている。確かに、実際の生活の中では、突然歌い、踊りだすというミュージカルならではの魅力は不可解なものかもしれない。だが、ある意味現実離れしたその行為だからこそ、ミュージカルはそこに夢と希望を投影できる。ミュージカルを生業にしている人の証言なしに断定するのは少し気が引けるので、控えめにそう主張させてもらう。荘厳なオープニング曲を除けば、この作品を彩る音楽は全てセルマによるミュージカルである。彼女の無邪気な夢と希望が込められた、愛しいミュージカルである。土砂降りの絶望の中だからこそ、セルマは歌い、踊る。そして、そこにささやかな夢と希望を投影するのだ。心に吹きすさむ絶望の嵐の中、朽ち果てずにいる唯一の砦。セルマにとっては、それがミュージカルだったのだ。
 この作品が僕らに求めること、それは「見ろ」である。ただそれだけである。絶望を見ろ。その先にある希望を見ろ。エンディング曲“New World”は「最後から2番目の歌」。もし人生が見ることならば、私は固唾を飲んで見守る、次はいったい何が起こるのだろう――。この作品で、絶望の先、最後の歌、が具体的に描かれることはない。ラース・フォン・トリアー監督は、それらを完全に観客に委ねた。観客それぞれの心の中で歓喜の産声をあげて立ち上がる希望を見てくれ、この作品が求めることとはそういうことである。お金、仕事、視力、そして、命。彼女の手の中から次々とこぼれ落ちていったそういったものが引き起こした欠落感が、決してこの映画を後ろ向きなものに仕立て上げなかったのは、その空白以上の夢と希望がこの作品の見ないところには満ち溢れていたからである。だからこそ、この作品は1人の人間を絶望の淵に引きずり落としてカタルシスを得るような悪趣味な作品では絶対になかったし、簡単に「暗い」と分類できる作品でもなかった。レンタルショップなどのポップには安易に「暗い、暗い……」と書かれがちなこの作品ですが、逡巡は捨て去ってレジへ走ってください。
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