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ラヴ・マシーン

James Blake
/ James Blake

James Blake-James Blake
僕たちは出来損ないの機械
 本年度上半期に発表された作品の中でも恐らく最も注目を浴びた一枚。ジャンル云々に関しては、聴いただけでこれは何だと特定できる能力を持っていないのでよくわからないが、音数の少ないダウナーっぽいダブステップに彼の過剰にエフェクトのかけられたボーカルがのせられる、非常にテクノロジカルでありメランコリックな印象の一枚だ。冒頭の“アンラック”を聴いて、カーペンターズの“クロース・トゥ・ユー”をトークボックスを使用して歌ったスティービー・ワンダーの名演を思い出した。オリジナルの“クロース・トゥ・ユー”ではなくてポール・ウェラーの面白おかしいカバーで育った人間なので、あんまり自分の感性には信用できないところが多いのだが、スティービー・ワンダーのあの演奏はとにかく感動的だった。色んなシンガーの歌う“クロース・トゥ・ユー”を聴いてきたが、なんと言うか、あれほど自分の心に近いあの歌を聴いたのは初めてだった。人間の肉声に、まるでエレクトリックな楽器演奏のようなエフェクトをかける魔法の箱、トークボックス。機械の音の方が、人間の心に近い。そう思わせるような名演だった。ジェイムス・ブレイクのデビュー作となる本作を聴いていると、ダブ系の音楽にありがちな、身体がどこまでも深い海の奥底に沈んでいくような感覚を、やはり味わうことができる。だけどそれは、例えばポーティスヘッドのような、気持ちまでもが沈んでいく、身も心もブラックホールに呑み込まれてしまうような圧倒的な虚無感とは、少し違うような気がする。心だけを置き去りにして、身体だけが沈んでいくような。言い換えるなら、心だけが、まるで摘出されていくかのように、海の表面に浮かんでくるような。こんなにもテクノロジカルなのに、ひとりの人間の身体が沈んで見えなくなって、透明な人間になって、その内部の心の動きを直接見ることができるみたい。どうしてこんなことが起きるんだろう。だけど、人間だって、その構造を分解すれば、機械のひとつだと言えないこともない。感情だって全部本当は単なる電気信号。その反応のパターンを数多ある中から選んでいるだけ。ただ、ほんのちょっとしたことでその選択に狂いが生じてしまう、傷つきやすい機械。バチバチ。ドキドキ。マタイツカ、キミニアエルカナ。なんて考えている傍らで。オナカヘッタナ、グーグー。とかやってる、愉快な機械。
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09:44 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
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