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A Million Love Songs

Never Too Much
/ Luther Vandross

Luther Vandross-Never Too Much
どこからが永遠ですか
 あるときはセッション・シンガーとして、あるときは自らのファースト・ネームを冠したボーカル・グループの一員として、そしてまたあるときはサウンド・クリエイターとして、七十年代半ばからその才能を随所ですでに発揮していたルーサー・ヴァンドロスが、81年に満を持して発表した初のソロ・アルバム。七曲三十六分と非常にコンパクトな収録内容だが、その質の高さは超破格。冒頭を飾るタイトル・トラックはディスコ・ミュージックとしてもお馴染みの有名曲だが、その足取りは非常にエレガント。続く必殺曲“シュガー・アンド・スパイス”のような溌剌としたアップ・ナンバーにしても、まるで水の中で手を取り合い踊るかのように、自然なしなやかさが身についた優雅なステップを連想させる。ルーサーの完成したヴォーカルとゴスペルによるコーラスが絡み合いながら、天にも昇るような高揚を見せる“ユー・ストップト・ラヴィング・ミー”も重要な一曲だろう。ラストに収録されたバート・バカラック作のスロウ・バラード“ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム”では、ルーサーの歌声のあまりの美しさにそのまま身を委ねたくなるような陶酔感が味わえる。サウンド・プロダクションも素晴らしく、高層ビルや煌びやかなライトといった演出を必要としない、ゴージャスでありながらとても軽やかな都会的ムードが全体を覆っている。その気取らなさは、ねずっちです、みたいなチャーミングなジャケット写真からも理解することができるかもしれない。
 本作収録曲ではないが、ルーサー・ヴァンドロスの楽曲では他にも86年の“ギヴ・ミー・ザ・リーズン”が特に好きだ。ソウル・ミュージックは基本的に、「愛」についてしか歌わない(どんな音楽でもそうだと言えるが)。様々なアーティストが、自分なりの愛に名を与え、定義付けるかのように歌い続けているが、しかしどの歌も、愛の周囲をぐるぐると巡るばかりで、その内側にはなかなか切り込めない。理由をくれ、と歌うことはできるが、愛する根拠そのものを歌ったシンガーはいない。ハウスが必ずしもホームではないように、それが容れ物としての形を持っていないからだろう。握ってみるまで、抱きしめてみるまで、その感触はわからない。どこからが愛で、どこまでが愛か。それは、人が歌を歌い続けること、それを聴き続けることと似ている。もっともっと歌いたい。聴きたい。どこまでいっても、決して多すぎることはない。
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