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会いたくて会いたくて、震えるのも発明だ。

Kashif
/ Kashif

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街で一番目立つ服着て待ってるから
 82年のプロデュース作であるイヴリン・キングの“ラヴ・カム・ダウン”を皮切りに、次々と良質なヒット曲のプロデュースを手掛け(個人的にはこの人の関わった楽曲ではタヴァレスの“ラヴライン”が群を抜いてお気に入りだ)、新進気鋭のプロデューサーとして驚くほどの短期間でその名を馳せたカシーフ。鍵盤奏者としてのセンスを活かし、シンセサイザーを大々的に導入したエレクトロニックなサウンドで80年代ブラック・ミュージックの新本流を作り上げたカシーフの、ソロ・シンガーとしてのキャリアのスタートを飾ったのがこの83年発表のデビュー・アルバムだ。くるまったシーツのようにふくよかなシンセの響きがムードを作り、美しい女性コーラスはカシーフのボーカルとの対話を実現し、ベッドタイムを演出するような色気のあるダンス・ミュージックとして、極めてレベルの高いプロポーションがすでに完成している。生楽器のみでは不可能なスタイリッシュで都会的な洗練を帯びた音の感触は、現在でも広く親しまれているR&B(言葉本来の意味とはもはや関係のない音楽だが)と呼ばれるもののプロトタイプと言っていいだろう。いま聴けば確かに打ち込みなどは軟弱に感じられるかもしれないが、八十年代のブラック・ミュージックに大変革をもたらし、現在までもその影響力の片鱗を覗かせるカシーフの功績はやはり特筆に値する。それにしても、やたらとラヴラヴ言いやがる。収録曲全八曲のうち半分の楽曲タイトルに"Love"の文字。内容は、全曲ラヴ・ソングである。本作によりその価値を広く知らしめた、デジタル楽器を導入したブラック・ミュージックの新たな体系をより深化させたセカンド・アルバムとして、カシーフは本作の翌年に傑作“センド・ミー・ユア・ラヴ”というEメールみたいな(今でこそだが)タイトルの作品を発表している。会いたくて会いたくてたまらない思いが、ふたりの間に横たわる時空や距離を、とても感動的な音色と共に飛び越えてしまうことが、時として起こる。あらゆる発明の根拠は、ひとえにその思いに集約されると言ってもあながち間違いではないだろう。ファンクから歌謡曲のようなバラード路線へと比重を傾けたライオネル・リッチーが古いソウル・ファンから忌み嫌われたように、カシーフに対してもそれなりに非難の声を上げる者はいたのではないかと予想するのだが、しかしこれこそがカシーフにとっての再会を願うソウルだったのだろう。愛は、いつだって人に奇妙な行いをさせるものだということだろう。
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