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『だから言っただろう』 「あぁ俺の負けだ、驚いたよ、まさかお前の番がくるとはね」『まさかお前は、 鏡ばっかり見てるんじゃないか?そんな不粋はするもんじゃないよ、毛並みは常 に整えておくものさ、しかも、いつでも、決まった誰かの為にね』「でも、いつ 、あの娘がそうだと確信したんだ?」『実を言うと、最初っからさ、そう、ほん とに、初めのときから…』「はぁ…そんなもんかね」『そんなもんじゃないさ、" そう"なんだよ』

The King Of Limbs
/ Radiohead

Radiohead - The King Of Limbs
僕を支配する哀しき王様
 とても自分がレディオヘッドの熱心なリスナーとは思えないので滅多なことは言えないが、近年のインディ・ロック・シーンの多くの若手バンドがやたらと「海」を目指したような作品をリリースしているのに対し、レディオヘッドの最新作『ザ・キング・オブ・リムス』のヴィジュアル・イメージが一目見て「森」であることがまず印象的だった。それだけに、表現の爪先が触れるところは明確な手応えを与える一方で、吸い込まれるように謎めいた奥行きを感じさせる。ダブステップというのだろうか、ダウナーっぽいエレクトロニクスとジェントルな生楽器の演奏が楽曲からことごとくメロディを奪っていて、前作に収録されていた“ジグソー・フォーリング・イントゥ・プレイス”のようなわかりやすい歌は皆無。トムのボーカルはむしろ、歌というよりもお経に近い。何事にも無知な人間なので、本作のモチーフになっている数々の神話や信仰についてはさっぱりわからないことだらけなのだが、アートワークにびっしりと描かれた無数の枝が触手のように伸びる木々、そして『ザ・キング・オブ・リムス(リムス=人や動物の肢)』というタイトルから察するに、この音は人間の(もしくはそれに限りなく近いものの)身体に内側から触れようとしているのではないだろうか(なんて単純な連想!というかそのまんますぎて、いま、自分にビックリした)。だからこそ本作では、『イン・レインボウズ』のような、(虹のような)不可能への到達、(虹のような)理想に対する諦め、といった手の届かない場所に音を飛ばすための昇華していくメロディよりも、この重く沈んでいくようなダブステップを基調にしたサウンドが適当だったのだろう(自分の腕や足を指の腹で叩いたらこんな音がする)。しかしそれにしても、本作のアートワークに採用された精霊たちのイラストはおぞましく奇形で、そしてほんの少し、キュートだ。レディオヘッドの音楽に対しては特別な思い入れはないが、ひたすら美しくなりたいと叫んでいたデビュー・アルバム『パブロ・ハニー』のトム・ヨークにはなんだか触れてみたくなるような哀しい愛嬌を感じたことをいまも覚えている。自分の姿形(もちろん思考や精神もだ)に対して嫌悪感を抱く生き物なんて、恐らく人間だけだろう。そういう意味で、トム・ヨークには一方的に人間的な魅力を感じている。アルバム発表毎に自身の音楽を細かく定義・修正し、すでに二十年に亘るバンドとしてのキャリアを築いてきたレディオヘッドだが、その長い期間、このバンドがその立脚点を見失い、立ち止まったことなど一度もなかった。すべては地続きな一本の道のりである。そしてそのすべての始まりを飾った、暗くも美しいあだ花を開かせたエネルギーの源は、この嫌悪感に他ならなかった。これまでの作品に比べると、確かにコマーシャルな意味でのポテンシャルとしては、バンドの名が持つ存在感を上回るものではないかもしれない。しかしそれにしてもラストにそっと添えられた“セパレーター(=分離するもの)”が印象的だ。この現実という名の夢から覚めることさえできれば、もっと美しい自分に出会うことができるのに。そう歌っているように聴こえる。
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