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お昼休み放送局

Rapture
/ Anita Baker

Anita_Baker-Rapture_3.jpg
珠玉のセイム・オールド・ソングス
 主に70年代後半から80年代中期にかけて、官能的なブラック・ミュージックを中心としたプログラムで人気を博したアメリカのラジオ番組『クワイエット・ストーム』。ジャズの素養を色濃く持ったシンガーであるアニタ・ベイカーが86年に発表したメジャー・デビュー・アルバムである本作は、そんなクワイエット・ストーム・ブームを代表する名盤のひとつとして知られている。当時日本のラジオでもかかりまくっていたという名曲“スウィート・ラヴ”を筆頭に、泥臭いソウルとは明らかに一線を画した、ジャズのしなやかさ、フュージョンのふくよかさの際立つ洗練されたナンバーが並んでいる。同時代の流行であったデジタル・サウンドに左右されないオーセンティックな音作り、キリスト教終末論における恍惚的な解放をモチーフにしたアルバム・タイトル、漆黒の中で祈るように着座したジャケット写真の佇まい、とひたすらにイメージはエレガント。べらぼうに歌はムーディ。でも、歌声はちょっとだけ気だるい。疲れてる。そこが、とても魅力的。広く浅くをモットーに音楽を聴いている、何に関してもにわかの僕としては、ジャズはやっぱりこの疲労感だろ、とすぐに思ってしまうわけで。場末のバー。お馴染みの酒とくたびれた煙草。使い古されたフレーズ。お決まりの座席。それは、愛着という名の宝石。誰かの手の中で、長い時間をかけて可愛がられてきた輝き。そしてそんな、長い時間の経過を感じさせる代物は、どれも決まって同じ色をしている。ウイスキーも、古いアコースティック・ギターも、手垢にまみれたテーブルの木目も。太陽も、一日という長い時間をかけて、最後の最後にこの色になる。イメージはあくまでも、ピアノの美しいボディを思わせる、エレガントなジャズの漆黒。でもその歌には、琥珀色のソウルが確かに光っている。これはいい。
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12:24 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑

史上最強の女子会

Ooooooohhh...On The TLC Tip
/ TLC

TLC-Ooooooohhh... On the TLC Tip
お喋りが趣味の女の子
 90年代を代表する傑作アルバムとして有名な二枚目『クレイジーセクシークール』(TLC随一の名曲“クリープ”収録)、代表曲のひとつである“ノー・スクラブズ”を収録し日本でもミリオンを突破した三枚目『ファンメール』、そしてリサの死を乗り越え制作された四枚目『3D』。こうして振り返ってみるとどのアルバムも特別なものばかりだが、僕が最も好きなのが92年発表のこのデビュー・アルバム。セカンド・アルバム以降、アダルトで本格的なR&Bに接近していくTLCの作品郡の中で、最もヒップホップのテイストが強く、最もファンキーで、最もバカバカしいアルバムである。R&Bに近づくにつれてラップ・パートで存在感を発揮していたリサの役割が徐々に後退していくような印象のあるTLCだが、本作では三人が三人とも、前へ前へと凄まじいアピールを見せてくれている。大きく分けて二部構成になっている本作だが、“エイント・2・プラウド・2・ベグ”から“ヒズ・ヒストリー”までの六曲からなる前半部分が特にいい。スモーキーな歌声がとてもクールなTボズ、感情爆発歌い上げ系のチリ、そしてコミカルで実に流暢なラップのテクニックを持つリサ。楽しむために生まれてきたんだとばかりに、あまりにのびのびと、あまりに自由奔放に、それそれがそれぞれの魅力を余すとこなく発揮しているのが本作だ。お喋り好きな女の子たちの雑談を聴かされているような気分になるくらい、実にいびつでやかましいのだが、初期のスパイス・ガールズみたいに、ひとりが喋り始めるとたちまち盛り上がって手のつけられない状態に突入するような、そんなとんでもない高揚感がある。“エイント~”“ワット・アバウト・ユア・フレンド”“ハット・2・ダ・バック”のシングル三曲に関してはもう、個人的にはジャクソン5のCDによくある“帰ってほしいの”“ABC”“小さな経験”の究極の三連発にさえ勝るとも劣らない大アンセムの嵐。おまけにTLCの名刺代わりソングとも言える“ショック・ダット・モンキー”まで入ってる。こんなにもベラベラと饒舌で歯に衣着せぬアルバムにはそうそうお目にかかったことがない。かと思えば、終盤には“ベイビー・ベイビー・ベイビー”(ベイビーフェイス作)のようなミディアム・バラードまでひょっこりと顔を出す。爽快なくらい賑やかに混乱したこのアルバムの魅力の根っこは、若いから、未熟だからっていうのとも、少し違って。お喋りっていう、独特のステップ。お喋りしながら踊れちゃう。だって、女の子だから。男の子には、この「ながら」の部分がとても難しい。「好き」って思いながら、「嫌い」だなんて、なかなか上手には言えない。
01:46 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑

オール・タイム・ベストってやつだ

The Velvet Rope
/ Janet Jackson

Janet - Velvet
振り向けば、愛
 後に『ディシプリン』以外のすべてのアルバムで制作を共にすることになるジャム&ルイスとの衝撃的な出会いを果たした86年発表の『コントロール』。実質的には三枚目のオリジナル・アルバムだが、ジャネットのキャリアはそこから始まったと言ってもあながち間違いではない。彼女にとっての最初のヒット作であり、ジャネット・ジャクソンというひとりのシンガーとしての人格を表すに欠かせないパフォーマンスが、初めて結実した瞬間のアルバムだからだ。すべてはそのアルバム・タイトルが物語っている。『コントロール』。交錯する思い。乱れる感情。自分を翻弄するそんな心の揺らぎを厳しく律し、支配し、心に惑わされることのない強靭なビートを、いかに打ち鳴らすことができるか。ジャネットにとって、踊るということは、そういうことだった。そんな自分への異様なまでの厳しさが、『コントロール』以降も『リズム・ネイション』や『ジャネット』というストイックで気高い傑作を立て続けに彼女にもたらした重要な条件であったことは間違いない。そんな彼女のディスコグラフィを見つめなおしたとき、『ジャネット』の次作として97年に発表されたこのアルバムだけが、明らかに異質の存在感を放っている。「アーティスティック」という苦し紛れの誉め言葉でしかあまり語られることのない、地味なアルバムではある。なぜならこのアルバムには、それまで彼女のサウンドの象徴でもあった、自らを規律する抑制のビートが、まったく鳴っていない。あの厳しさは、同時に彼女のプライドであり、自信でもあったのだろう。『コントロール』以降、常に屹然と正面を見据えて佇んでいた彼女は、本作のジャケットで初めてその顔を背けた。十枚あるオリジナル・アルバムの中で、彼女が顔を隠した写真が採用されたのは、このアルバムだけである。本作で、彼女は恐らく自らを最も端的に表現するであろうその顔を、すでに失っている。
 決してひとつの明確なコンセプトに沿って作られたアルバムではない。ただ、自分が愛しいと思う誰かを、そのまま、愛しいまま描こうとした愚かしいほどに真正直でピュアな衝動が、おのずと背景を伴った物語を選び出している。だからこそ、彼女にとって本作で重要だったのは、心を制御し、強靭なビートを叩き出すことではなく、むしろ、踊ることを止めることだった。ビートに合わせて踊るのではなく、心の揺らぎに溺れるように、踊らされること。蜜月から孤独までのあらゆる波間を描く“ユー”“ゴー・ディープ”“トゥゲザー・アゲイン”“エヴリ・タイム”“アイ・ゲット・ロンリー”“スペシャル”といった錚々たる名曲が並ぶ本作だが、Q-tipと共演した“ゴット・ティル・イッツ・ゴーン”が特に素晴らしい。失恋をモチーフにしながら、失わなければ手に入れられないものがある、という非常に表現し難いもどかしさを、見事に描き出している。失わなければ手に入れられないもの。それは、本作そのものを表象するようなテーマのひとつだ。踊ることを止めることで、心の赴くままに、初めて躍らされた恍惚。顔を背けることで、初めて浮かび上がるもうひとつの「わたし」。ビートを失うことで、初めて手に入れることのできたタイミング。それが当然のことであるかのように、失ってみるまで気付かなかった。愛しくてたまらなかったあの人こそが、わたしの鼓動、時間、そして他ならぬ「わたし」自身だった。愛はたまに、気付かないほどなめらかに、気付いてみれば驚くほどダイナミックに、あらゆる法則を超えるときがある、ということかもしれない。初めて聴いてから今年でちょうど十年目になるけど、いまでもマジで頻繁に聴く名盤中の名盤。絶対に持っておいた方がいい。
19:42 | 音楽 | comments (0) | trackbacks (0) | page top↑
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